記事28 本当に被害を被るのは誰?安全配慮義務違反について
裁判長イラスト - No: 22933539/無料イラストなら「イラストAC」 (ac-illust.com)
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第28回目は「安全配慮義務違反」に関してです。
安全衛生担当の皆様にとって、「安全配慮義務」とは守らないと大変なことになる法律の一つ、と最初に教わったかと思います。ただし、どんな判例があるのか、その詳細まで知っていない方も多いかと思います。本日は、実際の判例を元にお伝えし、誰が最もデメリットを被るのかまでお話したいと思います。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
ファイル⇒ダウンロード⇒pptxを押して下さい。
★目次
安全配慮義務とは?
一番最初に皆様が学んだであろう「安全配慮義務」について、以下、おさらいします。
平成20年3月1日から施行された労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)では,「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。」と規定され,労働契約における使用者の安全配慮義務が明文化されました。
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)の内容|弁護士法人四谷麹町法律事務所 (y-klaw.com)
要するに、「人を雇って働かせる場合、安全への配慮が必要ですよ」という内容です。こちら、働く人全員に適応され、派遣の方、下請け企業の方等々、関係なく、全ての人に適応されます。
【大学教授監修】安全配慮義務違反とは? 義務の範囲や判断基準、罰則や対策まで徹底解説 | パーソルワークスデザイン (persol-wd.co.jp)
労災補償の現実について
記事5「災害件数推移とその傾向でも示した通り、死傷者数、死亡者数は低下傾向にあります。
〇労働災害による死亡者数、死傷者数の推移
よって、労災補償額も低下傾向にあると推測されます。
*労災補償の年度別支払い額をグラフにてお見せしたかったのですが、データでは見つけられませんでした。ご存じの方、教えて頂けますと幸いです。
ただし、症例別に分類すると、精神障害のように申請件数や支給額が増加傾向にあるものも存在し、一概に全ての項目において改善されているとは言えません。
〇精神障害による労災補償状況
安全配慮義務とは?職場の安全を守るために企業がすべきこと|ALSOK
「安全配慮」と聞くと、高所作業時のハーネス設置や、薬品飛沫防止の保護具着用義務化等、作業中の配慮を想定される方は多いのではないでしょうか?しかし、実はそれだけではなく、長時間残業の是正、過労死の防止、心理的安全性の確保等、良好な労働環境の形成に至るまで、非常に広い範囲での配慮が必要となります。
安全配慮する基準は労働契約法の第5条に定められた法律に基づいています。
労働契約法 第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
また、労働安全衛生法第3条には快適な職場環境を作ることや労働環境の改善を企業は努力する義務があるとも明記されています。
労働安全衛生法 第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
つまり会社は雇用形態や労働環境に関わらず、従業員の健康や安全を守るために多角的に配慮を行う義務があるということです。基本的な労働時間はもちろん労働環境や安全管理、労働条件や職場の環境についての改善も含まれます。
安全配慮義務違反の範囲は?パワハラの罰則と通報方法も│防犯工房 (bh-atelier.com)
判例紹介
殆どの企業において、安全対策無く業務に従事させているケースは稀かと思います。しかし、残念なことに労災は発生し、その多くは再発防止策や過去の事故を水平展開することで防げたものが殆どです。
今回は戒めの意味も込め、安全配慮義務違反に該当したケースをご紹介します。
陸上自衛隊事件(最高裁昭和 50 年2月 25 日第三小法廷判決)
【概要】
陸上自衛隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退してきたトラックにひかれて死亡した事例で、国の公務員に対する安全配慮義務を認定した。
(事案の概要)
陸上自衛隊員Aは、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退してきたトラックにひかれて死亡した。これに対し、Aの両親Xらは、国Yに対し、Yは使用者として、自衛隊員の服務につき、その生命に危険が生じないように注意し、人的物的環境を整備し、隊員の安全管理に万全を期すべき義務を負うにもかかわらず、これを怠ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を求めて訴えをおこした
川義事件(最高裁昭和 59 年4月 10 日第三小法廷判決)
【概要】
宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事例で、会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされた。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/12.pdf
本当の問題とは?①安全文化の構築
今回、安全配慮義務という法律があるからこそ、企業は安全対策を行っていると記載しました。ただし、この考え方、実は安全文化の構築には弊害となります。
記事8「相互啓発型の安全文化」にも記載しましたが、安全文化の発展経緯は4段階あり、「法令巡視がゴール」と捉える文化は一番初期の段階となります。
第 1 段階:反応型 法令遵守がゴール。経営層も興味が無く担当へ丸投げの状態。
勿論、皆さんは血の通った人間で、法令遵守がゴールであり、自身の部下や仲間をどうでも良いと感じ、法令があるから仕方無く安全対策を推進している、とは私は思っていません。しかし、企業母体が大きくなり、管理者と作業者との距離が離れれば離れる程要注意が必要です。
本当の問題とは?②人材確保
他の問題点として、安全配慮義務が徹底されていないと、離職率の増加や良質な人材の確保が困難になります。人事系の方が非常に困るパターンです。
以下、退職理由ランキングを掲載しますが、本音としては、人間関係の他にも、労働時間や環境の不満が2位に占める程、安全配慮が欠けていること、というのは、退職理由になり易い重要な項目です。
〇退職理由の本音ランキング
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)
安全配慮義務をなぜ守らないといけないの?と、無駄な出費をかけることを嫌がる事業者が存在することもまた事実ですが、実際問題、離職率の増加により結局は自分達に跳ね返ってきます。
最近、転職系のCMも多く発信されていますが、人を集めるためにかける宣伝費も、究極的には無駄な出費であり、本当に人が殺到する企業はCMを行いません。
安全配慮義務に欠けることは、実は自分達に跳ね返る行為であり、労災発生に伴い発生する多額の賠償金から考えると、安全対策実施こそが最も安価であり、その浮いたお金こそ、従業員や企業に還元できるものです。
安全配慮義務は基本の「基」ですが、今一度認識を高めて下さい。
事故を起こすと大変なことになると聞くのですが、実際に被害を被るには被災した本人は勿論、企業自身にまで被害が及ぶケースも多く存在します。特に最近はSNSの発達もあり、噂一つで倒産する可能性もあります、また、従業員の目も肥え、悪い噂により優秀な人材も集まり難くなるということが想定されます。
今回は、より現実身を持って欲しいと考え記事にしましたが、安全衛生担当者の方は、自身の業務がその被災者だけでなく、企業自身をも救う大切な取り組みであることを今一度思い返して下さい。そして、意識を高く持って、継続対策をお願いします。
では、今日も一日、ご安全に。
記事27 なぜ?を繰り返してみよう。酸欠事故から学ぶ「なぜなぜ分析」による事故原因の分析
職場のあんぜんサイト:ヒヤリ・ハット事例(有害物との接触) (mhlw.go.jp)
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第27回目は「酸欠事故、及び、なぜなぜ分析」に関してです。
今回は酸欠事故を題材として、その事故の原因分析手法について紹介します。製造業の方は酸欠がどの程度危険であるか、既にご存じかと思いますが、他業種から見ると想像し辛い事故であるのも事実です。今回は、先日起こった酸欠による死亡事故を重大災害と捉え、業種に関わらず二度と繰り返さないためにも、周知の意味を込めて記事にしました。併せて、事故の原因を調査・分析する手法として「なぜなぜ分析」も紹介します。こちらの分析手法はとても便利で、労災に関わらず広く使用できますので、参考にして頂けますと幸いです。
- 酸欠災害の恐ろしさは、気づいたときには既に手遅れで、助けを呼べないこと。
- 沢山の理由が推測される場合に有効なのが「なぜなぜ分析」。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
「こちらをクリック」
★目次
酸欠事故の概要
まずは、以下をご覧下さい。
21日午前11時45分ごろ、北海道室蘭市の日本製鉄北日本製鉄所で「構内のコークス炉で2人の意識がない。ガスの恐れがある」と工場関係者から119番通報があった。道警によると、作業員の鈴木健さん(53)=同市日の出町=と近嵐正美さん(61)=同市中島町=が救助され、病院で死亡が確認された。道警は2人が酸欠で亡くなった可能性もあるとみて状況を調べている。
コークス炉は石炭を蒸し焼きにする施設。道警によると、2人は施設内にある「混炭機」のメンテナンスをしていた。近嵐さんが混炭機内で意識を失って倒れているのを鈴木さんが見つけ、中に入ったとみられる。施設にいた別の作業員は「工具を落として拾いに行ったのではないか」と話しているという。
混炭機はタンク状で、中では有毒ガスは検知されなかったが、酸素濃度が低かったという。
要約すると、「タンク状の混炭機をメンテナンス中に意識を失い倒れた方を発見し、助けに入った方も死亡。酸素濃度は低く、酸欠と推測。」となります。2名の方が死亡した悲惨な事故です。被災されました2名におかれましてはご冥福をお祈り致します。
繰り返しますが、この事故を元に、しっかりと水平展開(類似作業に対して対策を行うこと)が行われていれば事故は再発しません。
*以下の記事も参考にどうぞ。
〇水平展開
〇安全パトロール
酸素が足りないとどうなる?
今回の事故、酸欠が死亡原因と推測されています。
ところで、素朴な疑問ですが、人間は、毎日どのくらい酸素を必要とするのでしょうか?
呼吸量を調べたところ、1日で14400L(約20kg)と出てきました。
体重50kgの人の場合の一日の呼吸量(こきゅうりょう)を計算すると
0.5リットル×28,800回=14,400リットル
約20kg。これは、ごはんにするとなんと約100杯分にもなるんだよ。
人間は1日にどれくらいの空気をすうの? | 空気の学校 | ダイキン工業株式会社
これだけ多くの呼吸を必要とする人間ですが、酸素濃度が低い場所に行くとどうなるのでしょうか?以下、目安を掲載します。
酸素濃度 | 症状等 |
---|---|
21% | 通常の空気の状態 |
18% | 安全限界だが連続喚起が必要 |
16% | 頭痛、吐き気 |
12% | 目まい、筋力低下 |
8% |
失神昏倒、7~8分以内に死亡 |
6% | 瞬時に昏倒、呼吸停止、死亡 |
尚、瞬時に影響の出る6%はさておき、おおよその状況において、以下の通り、いきなり倒れる訳ではありません。
運動で呼吸が苦しくなったり、標高の高いところで頭が痛くなったりと、私たちの身近でも酸素欠乏症を自覚することがあります。医学的には健常者に酸素欠乏による症状が現れるのは概ね酸素濃度16%以下と言われていますが、15%になったからといって、いきなり倒れるわけではありません。
【第2章】第1節 酸素欠乏症の病理と症状②|(一財)中小建設業特別教育協会 (tokubetu.or.jp)
本当の恐ろしさとは
直ちに失神する例は少ないですが、厄介なのは、自覚症状が少なく徐々に症状が進行する場合です。酸素濃度12%に注目して下さい。「目まい」に加えて「筋力低下」の記載があります。
いざ、タンク内作業を行い、違和感を感じるもののそのまま作業を行い、頭痛等が発症してまずいと感じるも時すでに遅し。体が動かず、そのまま失神。というのが最悪のパターンです。
酸欠の恐ろしさは、気づいたときには既に手遅れで、助けを呼べないことです。
酸欠事故の発生状況
酸欠事故は緩やかに減少傾向にありますが、被災者は存在し続け、死亡事故も今なお発生し続けています。
〇酸素欠乏症の労働災害発生状況の推移(1992年~2021年)
酸素欠乏症・硫化水素中毒による労働災害発生状況 (mhlw.go.jp)
そして、その多くは製造業で発生しています。
〇業種別発生状況(2002年~2021年)
酸素欠乏症・硫化水素中毒による労働災害発生状況 (mhlw.go.jp)
製造業でなぜ多い?
製造業系は下記のような、人が何人も入るくらい大きな釜があります。
職場のあんぜんサイト:労働災害事例 (mhlw.go.jp)
主な商売道具と言っても過言ではないこちらの釜ですが、加工業にとって酸化は製品劣化の象徴であり、これらの釜は密閉性がとにかく良好です。そして、皮肉なことに、その密閉性が通気性を悪化し、酸素濃度を低下する要因となっています。
酸欠の対策
この酸欠に関わる作業に関して、以下が主な対策となります。
・酸素欠乏危険場所の事前確認
・立入禁止の表示
・作業主任者の選任
・特別教育の実施
・測定の実施
・換気の実施
・保護具の使用
・二次災害の防止
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/040325-3a.pdf
つまり、以下のような酸素濃度計の導入、であったり、
酸素濃度計 JKO-25 Ver.3 – ガス検知器 株式会社イチネン製作所 (ichinen-mfg.co.jp)
下記のような表示が有効です。
保安機材|東洋安全防災株式会社(公式ホームページ)-福島県いわき市 (toyoanzen.co.jp)
もし、各工場内にて、同様の箇所があれば対策をお願いします。
*ただし、今回、皆様にお伝えしたいことは少し異なります。
根本の原因は?
さて、長くなりましたが本題です。
今回、酸欠事故が発生したと書きましたが、推測部分も多く、その根本原因は何でしょうか?今一度考えて直してみましょう。
今回の災害ですが、そもそも原因が不確かです。
あくまでも、酸欠ではないか、という推測の元で記事を書いております。更には、「工具を落として拾いに行ったのではないか」という内容も記載されていますが、まだそういう証言があっただけで、その真意は不明です。
そんな沢山の理由が推測される場合に有効なのが「なぜなぜ分析」です。以下の様に、起こってしまった労災を問題(事象)として、分析することが有効です。
間違えない「なぜなぜ分析」のやり方・使い方 | もちブログ (mochi-blog.com)
何度も繰り返しますが、混炭機に入った際、酸欠により労災が発生した、としましたが、本当にそうでしょうか?
メンテナンスのためになぜ入る必要があったのでしょうか?
工具を落としたとありますが、酸素欠乏状態にあると分かっていれば入らなかったはずが、なぜ入ったのでしょうか?
と、沢山の疑問「なぜ?」が生まれ、それを分類分けして真の理由を突き止めることこそ「なぜなぜ分析」の出番です。
参考例
図解「なぜなぜ分析」の8つのポイント|事例や例題つきで解説 - びずすきる (biz-skill.com)
尚、実際になぜなぜ分析をされた方は分かるかと思いますが、意外にも膨大な時間がかかります。そして、悲しいことに、挙げたものの多くは間違いで、本当の原因は10件中1件あるかないかくらいと、原因究明にたどり着くのが大変です。
ただし、逆に言えば、沢山挙げれば挙げる程、真実に近づき、本当に必要な要因が分かります。
また、最終的には以下の様に、
事故発生⇒現地調査⇒分析⇒対策実施⇒水平展開⇒対策確認(安全パトロール)
が王道です。
このサイトでは何度も繰り返しますが、労災は誰の得にもなりません。ただ、残念なことに労災は再発しており、労災そののもは減少傾向であるものの、以前として根絶には至っていません。これは、水平展開が徹底されていないためでもありますが、そもそも行うべき対策が間違っていることも一つの要因です。
今回の災害ですが、よくよく見るとまだ分かっていないことも多く、あくまでも酸欠が要因の一つであり、原因分析次第では異なる対策方針が立てられることも考えられます。事故要因分析は時間を必要としますが、一つの災害をよく観察し、作業者から意見抽出に努め、真の原因を特定頂き、正しい対策、並びに、水平展開を実施されることが労災撲滅に繋がります。地味な作業が多いとは思いますが、是非正しい対策を取って頂けますと幸いです。
では、今日も一日、ご安全に。
記事26 現場だけの事故?事務職も危険? 墜落・転落事例と対策紹介
脚立を踏み外して転落する人イラスト - No: 23108538/無料イラストなら「イラストAC」
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第26回目は「墜落・転落事例と対策紹介」です。
多くの方は、墜落・転倒により発生する労災の規模は大きいと感覚的に理解できるかと思います。一方、そんな危険な墜落・転落事故を自分たちには関係が無く、高所作業を専門とする方にしか起こり得ない労災と捉え、どこか自分ごと化ができていない感覚を持ちます。しかし、実際はごく身近な場面で起こり得る、日常的な労災です。本日はそんな危険な感覚を皆さんに共有して頂くためにも、本記事を作成しました。
- 墜落・転倒事故は緩やかに減少傾向ではあるも、発生件数自体は多く継続対策が必要。
- ハーネスを用いた対策が有効であるも、使用方法を誤ると効果が発揮されない。
- 脚立・はしご作業は危険性が高く、日常的に使用機会も存在することから取り扱いに注意が必要。特に、天板に立つ・座ることは絶対に避けること。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
★目次
おさらい
記事10で、各業種別に最も多い休業災害要因を調査して報告しました。
〇業種別・事故の型別 労災まとめ
「墜落・転落」 ⇒ 高所作業が多い業種:建設や運輸
「動作の反動・無理な動作」 ⇒ 重量物の取り扱いが多い業種:貨物・・・記事12
「転倒」 ⇒ デスクワークや接客系が中心の業種:商業や接客娯楽・・・記事11
「はさまれ・巻き込まれ」 ⇒ プレス機やロール等を扱う業種:製造業
建設業における墜落・転落の発生状況
墜落・転落について、その名称を聞いただけで重大災害に発展しそうと感じる方、多いのではないでしょうか?では、以下に、建設業界の災害発生状況を示します。
〇過去10年間の墜落・転落災害発生状況
墜落・転落災害撲滅に向けた取組み (kensaibou.or.jp)
墜落・転落の対策例
有効な対策例としてはやはりハーネスです。下記の保護具を見たことはありませんか?
このハーネスは、高所作業を行う際に装着し、以下のように所定位置に固定することで、万が一の転倒・転落を防止できる保護具となります。
ハーネス使用上の注意点
有効なハーネスですが、使用方法を間違えると全く効果が無いというデメリットがあります。いくつか例を紹介します。
〇落下距離の誤り
〇フックが滑る箇所に取り付け
*上記サイトより2件紹介しましたが、他の例も詳細まで分かり易く記載されています。展開しますのでご覧ください。
フックをかける際の注意点
また、以下をご覧ください。
上記は、「振り子状態にならない位置にフックを取り付けて下さい」、という注意喚起です。
ただ、他にも気になる部分がありませんか?
というのも、どうやって高所にフックをかけたのでしょうか?
このポンチ絵からは、保護具が機能していない状態で高所に登り、フックをかけたとしか思えません。
尚、以下の様にフックをかける部分を手繰り寄せられる構造とすることが対策となります。安全な場所で装着した後に作業を行うことが重要です。以下、情報展開します。
セイフティブロック | 「TITAN」墜落制止用器具のサンコー株式会社 (sanko-titan.co.jp)
事務職にも多い転落・転落事故
さて、久しぶりにKYTを実施しましょう。以下、危険と想定される箇所は何でしょうか?
脚立|安全な使い方|安心・安全 正しい使い方ガイド|アルインコ株式会社(ALINCO)
*KYTの実施において、以下記事も参考にどうぞ。
こちら、何がいけないのか疑問に思う方、多いのではないでしょうか?
では、以下をご覧下さい。
(下記リンクより動画も視聴下さい。参照 シーン4:脚立をまたいで使用中 扉を開けた拍子に転落)
動画:脚立・はしごからの転落-スタントマンによる再現例-(発表情報)_国民生活センター (kokusen.go.jp)
実は、天板(脚立の一番上の段)に乗る、または座って作業を行うと、扉を開ける等、急激に後方へ重心が移動すると、そのまま後方に倒れることとなります。
意外と盲点な脚立作業
少し前のデータで恐縮ですが、はしご・脚立の製品別事故件数を以下に掲載します。
〇年度別の製品別事故発生件数
はしご・脚立どちらも毎年一定数の事故が発生し続けており、まだまだ注意が必要です。
先ほどの動画の通り、転倒時に頭をぶつければ、重大災害になり得ることが容易に想像できると思います。
これから年末にかけて大掃除が始まります。クーラーのフィルター掃除や電球の交換等、脚立やはしごを使った高所作業において、事故発生が懸念されます。
事故の規模と発生可能性
安全パトロール中、脚立作業において対策をお願いする機会があります。しかし、作業頻度が年に数回と少ないことから、作業者や管理者の方から「殆ど行わない作業だから大丈夫です」という言葉をよく聞きます。
(何が大丈夫なのか?という突っ込みはここでは敢えて控えます。)
対策は面倒であり、したく無い気持ちも分かるのですが、リスクが残り続け、事故発生が懸念され続けることとなります。
以下、記事2「リスク」について、「リスクアセスメント」= 「 事故発生の可能性や度合いを調査・評価すること」と紹介しました。
その際、リスク(災害や事故が発生する可能性や度合い)は、
①:発生した場合の事故の規模
②:事故発生の可能性
から算出することを紹介し、対策の優先順位を決めるよう説明しました。
よって、確かに①が低いと評点も下がることから、優先順位も同様に下がります。ただし、今回の脚立やはしごを用いた高所作業は、一歩間違えると重大事故になり、事故件数も一定して発生していることから、②が高くなり、優先順位は下がり辛いと考えます。
また、優先順位が低いことは、対策が不要ということではありません。ご注意下さい。
安全 = 許容不可能なリスクの排除 を行うことです。
終わりがない話ですが、安全確保には継続しか無いと考えます。
*以下記事も参考にして下さい。
繰り返し恐縮ですが、高所作業は重大事故になり易く、死亡事故も多く発生しています。また、脚立やはしごを用いる作業は、高所作業を専門とする業種以外でも日常的に行われ、意外にもその重大性は認知されていないケースが多いです。管理・監督者は安全配慮義務もあり、認知しているにも関わらず安全対策を行わないことから、罰せられるケースも存在します。
労災は誰の得にもなりません。労災が発生する前に対策を行い、皆が安全に過ごせる環境構築にご協力下さい。
では、今日も一日、ご安全に。
記事25 本当の恐ろしさとは? 労災の対応方法について
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第25回目は「労災の対応方法」について紹介します。
皆様がお勤めの会社で労災が発生したことはありますか?長期間にわたり無事故を継続されている企業もあれば、残念ながら労災が日常的・常態化されている企業もあるかと思います。「慣れる」という言い方が正しいのか不明ですが、こちらの対応、慣れない内はとても大変で、労基署や保険組合、または病院へ何度も電話することにになるかと思います。今日は、そんな時にも、落ち着いて対応できるよう、対応手順を紹介し、更には、暗黙のルールである、法律には無い、実はこんな落とし穴がある等も含め紹介できればと思います。参考にして頂けますと幸いです。
- 労災対応は大きく分けて3つ。(①病院への送迎、②労災保険の請求、③労基署への事故報告)
- 極力、労災担当者は指示のみを行い、書類作成やその提出はあえてしないこと。
- 労基署への書類提出は休業災害か否かで決まる。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
*ファイル⇒ダウンロードからお好みの形式で取得下さい。
★目次
労災とは?
当たり前のことで恐縮ですが、労災をご存じでしょうか?
労災=労働災害のことです。要は、仕事中に起こった事故のことを指します。
そもそも、労働災害とは何でしょうか?
労働安全衛生法では、労働災害を「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。」と定めていますので、簡単に言うと、労働者が仕事に就いている時に事故にあって、ケガをしたり病気になったりまたは亡くなったりすることを言います。
労災が起こったらどうしたらいい?
労災が起こると工場内がザワツキます。そして、ありもしない噂が凄い速さで工場内を巡りますが、安全衛生管理担当の皆様、まずは落ち着いて下さい。
労災の対応ですが、大きく分けると3つの手続きが必要で、早急な対応よりも、確実な対応が求められます。
①病院への送迎、②労災保険の請求、③労基署への事故報告、になります。まずは深呼吸し、以下を一読下さい。
そして、意外ですが、その対応方法は、労基署へ如何に正確に対応するか、ではなく、社内的に如何に正しいルートで判断するか、が重要となります。
①病院への送迎
被災者を病院へと送迎します。ここだけの話、産業医がいる・いないは関係無く、工場内の医療関係者に相談に行くと、ほぼ間違い無く近場の労災指定病院への受診を推奨されます。
尚、上記でも伝えた通り、専門性が問われる部分は判断を委ね、工場内の医療関係者に相談して必ず意見や見解を貰って下さい。そして、担当者の職位にもよりますが、自分が思うことは伝えたとしても、判断は上司に委ねて下さい。何度も言いますが、職務放棄ではなく、職位によって判断できる内容が決まっているケースが殆どであり、社内規定に従いましょう。
この判断を仰ぎ、病院受診を行うことになった場合、以下が注意点となります。
・受診する病院は「労災指定病院」にしましょう。
⇒受診前に電話して確認して下さい。
・保険証を使わずに受診しましょう。
⇒後々返金される際、保険証を使うと手続きが非常に大変です。最悪、使っても返金できるようですが、煩雑さから現金払いを推奨します。
②労災保険の請求
労災保険とは、以下の通りとなります。
労災保険とは、労働災害を被った労働者またはその遺族に対して迅速かつ公正な保護をするための保険制度です。労働者災害補償保険法に基づく国の制度で、保険者は国、加入者は事業主、保険給付対象は労働者及び遺族です。国が事業主から保険料を徴収し、労働災害が発生したときに、被災労働者及び遺族に対して治療、休業補償等の保険給付が行われます。
要するに「病院代や休んだ期間分のお金を貰える」という保険制度です。
こちら、実はそんなに手間ではありません。というのも、以下に書式が準備されています。
また、記入例も以下にあります。
そして、分からなければ、以下、各県の労基署に電話して聞けば良いので、慎重に進めば間違いようがない、というのが所感です。
全国労働基準監督署の所在案内 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
だいたいの労基署は電話すると丁寧・親切に教えてくれます。私も電話して感じたことですが、正直、質問する分には、全て正直に話したところで、労基署から目を付けられる、ということも無いと感じます。というのも、同じような問い合わせが毎日きており、労基署の方々、疲弊しているのが声から分かるためです。
*労基署の皆様、大変お疲れ様です。
正直、労災保険関連は、作成して病院や薬局に出せば終わりです。急ぐ必要もないので、確実に提出して下さい。
③労基署への事故報告
事故の規模によっては、労基署への報告が必要です。
具体的には、事故によって休む必要が生じた場合になります。
*尚、最近はWEBサービスの充実から、下記の通り、自動的に帳票を作成することができるようになっています。参考に掲載します。
昨今、企業は労災隠しを恐れ、意図せずに労災隠しになることもとても嫌います。コンプライアンス案件は担当者も敏感になり、提出忘れがないように、書面作成後は速やかに提出しましょう。
尚、提出期限ですが、
・休業4日以上は「遅滞なく」報告
・休業4日未満は取りまとめて報告
となります。
この世界にいると目にする「遅滞なく」ですが、とても基準が曖昧です。労基署の方に聞こうが、社内の有力な方に聞こうが、皆見解が異なります。
私の所感ですが、ミスしない程度のスピードで仕事を進めて頂き、確実に出せる日に出せばそれで良いと思いますので、あまり深く考えないでください。
注意点
全てにおいての注意点ですが、提出書類は嫌というほど関係者から了承を貰いましょう。特に、本人には必ずOKを貰って下さい。上記でも述べた通り、本人の意思を反映されずに申請されたパターンは揉めるケースが多いです。
*本来、請求関連は本人が作成することを前提としますが、おおよその場合、その複雑性から会社の人事・労務担当、もしくは安全衛生管理部門が作成することとなります。
そして、厄介なのが、労災認定されるかされないか、とても微妙な案件である場合です。記事12「腰痛対策と実例紹介」でも記載の通り、認定要件が少し複雑で、申請内容によっては労災認定されない案件もあり、最悪ここが争点となります。
休むか休まないかの違いは大きい
ここまで読まれてある種の悪い考えを持たれた方、たぶん頭の回転が速いとても悪い方です(笑)
そう、休業災害を起こさなければ、基本的に労基署への届け出は不要なのです。このことは、この業界に入って初めて学ぶことですが、とても重要なことです。
というのも、労基署への報告は、予告なしの監査や、最悪休業に追い込まれたりと、本当に憂慮すべき事項になり得ます。それが回避できる方法こそ、休業災害を避けることなのです。
極端な例ですが、親指をピンで刺して血が出て、一応消毒で病院に行けば費用負担こそ会社となりますが、次の日に会社され出社すれば、いわゆる「赤チン災害」(不休災害)になり、労基署への報告は不要です。
尚、この事故は大事をとって(どう大事をとるのか、突っ込みは控えて下さい)休めば休業災害になります。そうなれば、労働基準監督署へ書面提出が必要となり、目を付けられるキッカケになりますし、予告なしの監査対象になりかねません。
また、おおよその工場が掲げている、災害が発生していない期間を記録付けた「安全〇〇日達成!」の記録が0日へ修正となり、とにかく心象の悪い結果となります。
今までの話ですが、逆説的に言うと、休業災害相当の事故でも、通常業務はできないにせよ現場には代替のデスクワークがあり、それを治るまでとりあえず出社して行うようにすれば休業ではなくなります。
*これはとてもブラックな一例ですが、これが現実なのかなと思います。
休業しない場合は、『労働者死傷病報告』の届出は不要です。
企業はとにかくコンプライアンス違反を恐れています。それは、印象の悪さがとにかく強く、ひと昔前に流行った「バイトテロ」を象徴するように、最悪の場合倒産にまで追いやられるリスクを秘めた、本当に「テロ」になり得るからです。パワハラやセクハラが最近減少傾向にあるのはこの理由ですが、「労災隠し」も同程度に恐れられる内容で、大変注意が必要です。
安全衛生管理担当の皆様、もしも労災に直面したら、まずは落ち着いて、被災された方の症状を見て下さい。そして、病院へ行く必要があるのか、専門の方の判断を仰ぎましょう。その後、書類業務に着手し、何度電話しても良いので、時間がかかってもミスの無いように確実に進めて下さい。
では、今日も一日、ご安全に。
記事24 労災の悲惨さ伝わってますか? 聴講者への効果的な伝え方
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第24回目は「労災の悲惨さを効果的に伝達する手法」について紹介します。
安全衛生管理担当の皆様は、日頃より、事故や労災事例を紹介して安全意識向上に努められていることと思います。しかし、なかなか自分ごと化が難しく、聴講している従業員もどこか上の空というか、全体的に聞いていないような雰囲気を感じたことありませんか?本日は、安全衛生委員会等で、より皆さんへ効果的に内容を伝える手法について紹介します。良ければ参考にして下さい。
- 効率的な伝達方法は「心に響かせる」こと
- 講習等で伝える際は、データだけでなく、実体験等のストーリーも使用すると効果的である。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
ファイル⇒ダウンロード⇒pptxで保存
★目次
ついつい居眠り
なんらかの会議中、うつらうつらと居眠りしている方、見た経験ございませんか?
昔の会議は会議室集合が基本で、居眠りしても注意されていました(偉い人は除く)。しかし、最近はリモート会議で顔も見えず、居眠りが放置されていることが多いように感じます。(もしくは内職される方が多いようにも感じます。)
職業別・会社員・(居眠り・睡魔・寝る)イラスト - No: 23121296/無料イラストなら「イラストAC」
効率的な伝え方:心に響くかどうか
この居眠りは面白いもので、聴講者側ではある程度仕方ないと思うも、発表する事務局側になると自分のことは棚に上げ、ドンドン注意するようになります。
この居眠りの対処法といえば、おおよそが途中で質問する、休憩時間を入れる、グループワークを行う等、リフレッシュさせることが多いように感じます。
そんな中、いつもお世話になっている黒崎先生の動画より、良い方法が紹介されましたので展開します。
本動画、要約しますと、データを伝えるだけでなく、以下の通り、ストーリーを用いてより心に響く内容であればあるほど、聴講者に結果として表れる、という内容です。
効率的に聴講者へ伝えるには、心を動かす、所謂、感動させることが重要であるとの意見でした。
上記は当たり前のことかも知れませんが、しかし、意外とできていないことかと思いました。そして、皆が会議を聞かないのは、究極的に言うと面白くない、つまり発表内容が良くないことに発表者自身が気づき、反省しないといけない、と考えます。
心に響く教材は意外と少ない?
しかし、改めてネット検索してみると、厚労省や中災防等、各種機関より事故データは開示されているのですが、意外とそのデータに基づいた感想や実体験等、心に響かせる内容は少ないと感じます。
実は、事故の被災者や発災者へは、プライバシーの問題もですが、インタビューがタブー視されています。よって、事実や結果、つまりデータしかない表にでてこない場合が殆どです。
そんな中、検索していくつか見つけてきましたので、以降より紹介したいと思います。
紹介例① お父さんの手を返してください
「お父さんの手を返してください」。印刷工場で起きた事故で、労災の辛さを知った
「私が会社に入社してから2年後でしょうか、印刷工場で労働災害が起きました。印刷機の高速回転するローラーについたゴミを取ろうとして、男性従業員の手首から先を失ってしまったんです。当時私は幹部の一人でしたから、労災が起きた後は大変でしたね……。
従業員のご家族に謝りに行き『お父さんの手を返してください』と言われたこともショックでしたが、工場の中もその後はしばらく浮き足立っていました。一度労働事故が起きると、災害にあった人もずっと後遺症を抱えていかなければいけません。
労働災害の辛さを身にしみて感じたこの経験は、私が今の仕事をしている原点のひとつになったものでした」
紹介例② 個人ブログ
昭和38年11月9日に発生した三井三池炭鉱事故は、死者458名、重軽傷者555名を出しね戦後最悪の炭鉱事故・労災事故と言われています。
一番深い箇所が有明海の海面下600mにも及ぶ坑内電車を乗り継いで1時間もかかる大きな炭鉱で、1200人以上の労働者がおりました。
事故は石炭を積んだトロッコが火花を出しながら暴走し、坑内に浮遊する極めて細かい石炭の粉末(炭じん)に引火して大爆発を発生し、その爆発によるものの他のCО中毒も発生し、多くの人命を奪うこととなりました。
炭人爆発は常に清掃し水をまいて湿らせておけば防ぐことができたと言われていますが、「三池炭鉱で炭じん爆発事故なんておきるはずがない」「実際に何十年も起きていない」などとある種の「安全神話」があって、また、合理化による「炭じんや酸素濃度などをチェックする保安要員の削減」も要因と言われています。
戦後最大の労災事故といえば? - 美恵子のぶろぐ (goo.ne.jp)
紹介例③ 一日前プロジェクト
災害の一日前に戻れるとしたら…被災者の体験談に学ぶ内閣府「一日前プロジェクト」
「一日前プロジェクト」とは内閣府が実施したプロジェクトで、地震や水害などの自然災害で被災した方々や災害対応の経験をもつみなさまにお集まりいただいて、
・被災直後の行動
・体験を通じて上手くいったと思うこと、失敗したと思うこと
・もう一度災害が発生したならば、次はどのように行動したい
・日頃から何を準備しておけばよかった
といったお話しを聞かせていただき、そこから導き出される教訓や身につまされるお話しを小さな物語(エピソード)に取りまとめる活動です。被災者の様々な「思い」や「本音」の一例をご紹介いたします
災害の一日前に戻れるとしたら…被災者の体験談に学ぶ内閣府「一日前プロジェクト」:熊谷市ホームページ (kumagaya.lg.jp)
紹介例①~③ 総括
以上、如何でしたか?ショッキングな内容も多いですが、いつも以上に皆様に事故の悲惨さが伝わったかと思います。
ただし、時間に制限があったり、情報がそもそも無い等、なかなか毎回ストーリーを組み込むことも大変かと思います。よって、少しでも興味を持たせるために、以下の様に事故の写真を入れるのも効果的と考えます。展開しますので、参考にして頂ければと思います。
安全衛生管理業務を担当すると、各部門の安全衛生推進者や部課長に、部内への教育をお願いする機会があります。その際、本日のポイントである「心に響かせることの重要性」もお伝えすると、より効果的に伝達できると考えます。
皆さんの企業内では、過去の災害が纏められているかと思います。それも紹介例に使用することで、より現実味が増して良いと考えます。また、可能であれば、当時の被災者や労災担当者自身から体験談を話して頂けると、更に効果が上がります。良ければ試してみて下さい。
では、今日も一日、ご安全に。
記事23 介護業界の安全管理 データから見た実情の考察と今後について
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第23回目は「介護業界の安全管理」について紹介します。
先日、Twitterを眺めた際、介護現場の労働に関する悲痛な呟きを見ました。内容は、長時間労働の実情、人間関係の悩み、人員不足による業務の皺寄せ等、いづれも根深く解決が困難と感じました。私は介護とは異なる業種ですが、この業界が大変という噂しか聞いたことがありません。そこで、今回はデータから実情を炙り出し、現状と今後の動向・対策について調査しましたのでお話します。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
*下記の通り、資料をダウンロードしてご使用下さい。
★目次
- 介護業界を観察して
- 介護業界で事件が頻発する理由は?
- 再発は防止できないのか?
- データから見た介護業界 結果
- 人員不足についての考察 従業員の不足
- 人員不足についての考察 熟練者の不足
- 人員不足についての考察 管理者の不足
- 考察まとめ、及び、今度の方針
- 皆様へのお願い事項
介護業界を観察して
個人的なイメージで恐縮ですが、介護業界は3K(きつい・危険・汚い)や新3K(帰れない・厳しい・給与が安い)と非常に悪いイメージがあります。
更には、事件にまで発展した悲しいニュースも多く、更にイメージが悪くなっています。
介護業界で事件が頻発する理由は?
調査した結果、以下の理由発見しました。
*記事抜粋
・訪問介護は特殊な職場環境⇒他の人の目につかない環境で仕事を行う
この推測が真実であるとすれば、事故の頻発は職場環境の劣悪さであると考えます。
よって、介護現場が心理的安全性の欠如した環境のために事件が頻発したと推測されます。
エドモンドソン教授によると心理的安全性とは「支援を求めたりミスを認めたりして対人関係のリスクをとっても、公式、非公式を問わず制裁を受けるような結果にならないと信じられること」であると定義しています。そして、「個の職場では、率直に意見を言ったりアイデアを提供したり質問したりしても、懲らしめを受けるんじゃないか、ばつの悪い思いをするんじゃないかと不安になったりしない」と感じるときに存在するものだとしています。
再発は防止できないのか?
事故が再発を繰り返す理由は以下記事より、水平展開が不完全なためです。
*水平展開=過去に発生した類似災害に対して対策を行うこと。
よって、今回の場合でいうと、心理的安全性が確保されておらずに発生した事故について、水平展開が不十分、または、未実施で再発したと考えらえます。
データから見た介護業界 結果
考察材料として以下データを抜粋して展開します。
抜粋元:公益財団法人介護労働安定センター 図表解説 介護労働の現状について
●所定内賃金、賞与の経年比較<無期雇用職員※、月給の者>
●事業を運営する上での問題点(複数回答)
●介護人材の不足感と不足理由
*不足感・・・介護サービス従事者が「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した割合の合計値
従業員の不足感低下傾向。ただし、訪問介護員は高止まり。
不足理由は採用が困難である。
●採用率と離職率の経年比較(訪問介護員、介護職員の2職種計)
●離職者の勤続年数の内訳
●雇用管理責任者の選任状況
以上、まとめますと
良い点
★賃金・賞与は増加傾向。
★従業員の不足感低下傾向。
★採用率・離職率共に低下。
課題
▲問題点は良質な人材確保。
▲訪問介護員の不足感は高止まり。
▲不足理由は採用が困難なため。
▲勤続3年未満の離職者が全体の約6割。
▲約6割が雇用管理責任者を未選任。
では、上記結果から考察を行います。
人員不足についての考察 従業員の不足
予想外でしたが、最初に述べた通り、ブラックなイメージの強い介護業界ですが、ここ数年の努力が実を結び、賃金の増加・従業員不足感の低下・離職率の低下と、従業員不足に改善傾向が見られます。
仮に、人員不足が事件頻発の理由であるならば、この調子でより良くなると仮定すれば事故再発は防止できる方向に進むと予想されます。
尚、記事19「外国人労働者への安全衛生教育」で述べた通り、今後外国人労働者も増加傾向にもあるので、人員不足問題はさらに解決の方向へ進むと予想されます。
人員不足についての考察 熟練者の不足
人員不足が解消に向かう一方、採用が困難であったり、勤続3年未満の離職者が全体の約6割を占めるなど、人員自体は増加するも、熟練者数には難がある状況かと思います。
更に、約6割が雇用管理責任者を未選任ということからも、業務を兼任している部分が多く、まだまだプロを育てるという認識が薄いと予想されます。
人員不足についての考察 管理者の不足
約6割が雇用管理責任者を未選任であり、管理職比率が少ないために管理不足が懸念されます。
以下サイトより、「適切な組織の管理者は10%で足りる」との記載があるも、医療・福祉における管理者数は、部長・課長合計で6%以下であり、他産業から見ても相当少ないことから、より管理不足が懸念されます。
●産業別部長比率および課長比率(平成30年)
企業規模別・業種別の管理職比率 ~組織の管理者は10%で足りる~ – 組織・人事コンサルティングの株式会社トランストラクチャ (transtructure.com)
考察まとめ、及び、今度の方針
以上より、各種データから推測するに、熟練者・管理者不足が深刻しており、心理的安全性が担保されない職場が存在し、事件が頻発すると考えます。
本結果より、対処は非常に根深く、一長一短での解決は難しいものですが、私からの提案は、皆さん一人一人が日々レベルアップを図る意識改革こそ管理者不足をカバーし、且つ、熟練者不足を補う一番の方法かと思います。
まずは、是非とも自組織への情報展開をお願いしたいと考えます。
特に、記事4「安全衛生委員会」にも記載の通り、各施設毎に実施の安全衛生委員会等で情報発信を行うことで状況は快方に進むと考えます。
尚、本委員会は「労働者の危険・健康障害防止のための対策に関して論議する場」です。現状の課題を共有頂けますと幸いです。
皆様へのお願い事項
昨今、暗いニュースも続きますが、少しづつですが介護業界は良い方向に進みつつあります。今後、更に良くするには、国の政策や管理者の増強・増加も重要ですが、一人一人の意識改革も非常に重要です。
介護業界はとにかく「転倒」と「腰痛」です。以下に対策方法に関する記事を掲載しましたので、参考にどうぞ。
記事11「転倒災害の具体的な対策例とその手順」
第12回目は「腰痛対策と実例紹介」
更には、高齢者用の記事として、記事17「高齢者の労災と対策方法」も展開します。是非とも施設内での展開をお願いします。
今回、別業種に関して調査しましたが、意外な一面を見ることができました。ただ、私はデータでしか見ておらず、結果に違和感を感じる現場職員も多いと感じます。どうすれば介護業界の皆様が安全に業務を遂行できるのか、これは永遠の課題であり、安全衛生の「タネ」として対策を考え続けますので、ご意見ございましたらお気軽にご連絡下さい。
では、今日も一日、ご安全に。
記事22 今の仕事は楽しいですか? 工場の仕事紹介 安全衛生管理とは?(後編)
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第22回目も「安全衛生管理の仕事」について紹介します。
*記事21の続きです。
*尚、本日の内容は、安全衛生委員会の資料用では無く、安全衛生管理業務に興味を持ち、自分の天職にしたいと考える人を一人でも増やしたい、という思いから記事にしました。予めご了承下さい。
- ①お金を生み出す仕事は成果主義で業務量の多い傾向にある。
- ②お金を守る仕事の内、生産ライン上の仕事は、管理系ではあるが、業務量が多い傾向にある。
- ②お金を守る仕事の内、生産ライン外の仕事は、早急な対応を求められることは少ないが、理不尽なクレームが多い傾向にある。
- 安全衛生管理業務は、委員会管理、ISO書類管理、年間行事実施が主業務。
- 人には仕事への適正があり、個人差が大きい。
- 自分自身のことを感知することは難しく、認識のズレが発生し易い。
- 少しでも工場、及び、安全衛生管理業務に興味が沸いた人は職種変更も含めて検討して欲しい。
*以下の教育資料ppを展開します。自由に編集下さい。
★目次
- おさらい
- 各部門の仕事の特徴と
- ①お金を生み出す仕事
- ②ー1 お金を守る仕事 *生産ライン上
- ②ー2 お金を守る仕事 *生産ライン外
- 安全衛生管理の仕事
- 仕事は楽しいですか?
- 仕事と適正は考え方次第
- 安全衛生管理は狙い目?
- 安全衛生管理は求められているのか?
- どんな人が求められている?
- あなたの仕事、適正はありますか?
- その他 福利厚生、その他メリット
- 情報展開 転職エージェント
おさらい
記事21にて、工場の仕事をお金に着目し、以下の通り分類しました。
① お金を生み出す仕事
②ー1 お金を守る仕事 *生産ライン上
②ー2 お金を守る仕事 *生産ライン外
生産ライン・・・顧客要求が直接的に関わる部門。
本日はもう少し各部門について深堀し、更には安全衛生管理業務についてお話します。
各部門の仕事の特徴と
以下の表をご覧下さい。私の主観で恐縮ですが、部門と業務量や考え方について、分類しました。
以下、特徴を述べて参ります。
①お金を生み出す仕事
まず、全体的に言える傾向ですが、この部門は花形であり、人気も高い職種です。更に、出世もし易く、実力も認められ易い傾向にあります。
特に製造は、工場の中で一番力を持っており、おおよその物事は製造トップが決めるといっても過言ではありません。また、他部門から見ると必ず提案される側、いわゆるお客様になるため、他部門に対して言いたいことが言える力を持っています。
ただし、業務量が多く、顧客に振り回されるのもこの部門の宿命です。
社内外問わず打合せや問い合わせが多く、休みの日にはメンテナンスも必要で立ち合いのために出社、さらには設備トラブル・労災も起こり易い部門です。
働くのが好きな人、成果が目に見えて分かる方が好ましいと考える人はこの仕事が向いています。
特に、競争に慣れており、負けず嫌いな方にはピッタリな職種と考えます。
尚、開発に括弧付で(研究)と書きましたが、研究は力を持っている割に毛色が異なります。記事21で述べた通り、「顧客との距離が近く、更には生産ライン上にいると、業務量は増えます。」
この研究部隊は顧客要求ではなく、次世代品、いわゆる未来の技術を確立することに携わることが多く、顧客から少し離れます。よって、社外トラブル対応も減り、やや楽になります。
ただし、研究職は高い理想があって就職する方が多く、結果的に働く人が多く、残業が増える傾向にあります。さらに、この研究は、最低でも旧帝大の大学院卒と、知識量が非常に求められ、そう簡単には配属されません。
②ー1 お金を守る仕事 *生産ライン上
このあたりから、部門名を聞いてもピンとこない部門も増えたかと思います。
私の感想ですが、この部門は社外の窓口業務を担当し、生産ライン上にいるにも関わらず、比較的目立つこともない割に労力もかかり、大変な仕事と考えます。
特に品質管理はクレーム処理も兼任していることも多く、更には製品別に担当が配置され、製品数によっては管理職も全部見切れず、担当が放置になり易い傾向もあります。
社内的な立場は低いものの業務量は多いという、辛い立場になり易いです。
尚、材料管理については、こちらが顧客になるため、まだマシな部門になるかと思いますが、結局は製造からの要求に応える必要があり、業務量が増加する傾向にあります。
縁の下の力持ち、というのですが、実は、言う時は言わないとダメな部門でもあり、意外にも「①お金を生み出す仕事」に類似した能力が必要です。
②ー2 お金を守る仕事 *生産ライン外
本題です。本当にお待たせしました。この分類は、ずばり公務員です。
①や②ー1のように、生産ラインにはのっておらず、顧客からは一番遠い位置にいるため、早急な対応を求められる業務が比較的少なくなります。
ただし、まるで公務員であるがごとく、理不尽なクレームが多い傾向にあります。安全衛生管理については、記事20回目「安全パトロールの現実と正しいやり方」でも記載の通り、公務員の中でも警察的な立場になるため、とにかく嫌われます。
更に、本部門はお局や偏屈な人が他部署と比べると非常に多いことも特徴です。
お局や偏屈な先輩がなぜこの部門に集約されるかというと、異動が少ないためです。
この仕事は年間行事の繰り返しが多く、年数の長さ=仕事ができる、となり易い傾向にあります。さらに、お金を生み出す部隊ではないことから人の補充がし辛く、同じ人が長期間仕事を継続するために異動しない層が多く発生します。結果的に、権力が集中し、時には自分の上司以上に仕事ができるために、影の権力者となるケースが多く存在します。
安全衛生管理の仕事
さて、安全衛生管理の仕事が、おおよそ公務員であることを感覚的に掴んで頂けたかと思いますが、もう少し詳細に業務を紹介します。
本サイトの立ち上げ理由でもある「安全衛生委員会」に関して、資料作成に時間を取られることから簡略化を掲げて本サイトを立ち上げた訳ですが、この①安全衛生委員会に関する管理や、②ISOに基づいた書類の管理、③安全に基づく年間行事の実施、が主業務となります。
②ISOに基づいた書類の管理に関して、皆さん、工場に「ISO●●取得」と、大きく看板に掲げているのをご覧になったことありませんか?
施工実績 ISOの看板作成|柏原市の塗装工事専門店 加藤塗装店 (katoh-tosouten.com)
*尚、14001は環境、9001は品質で、45001が安全を意味します。
この意味を簡単に述べると、うちの会社はマネジメントシステムに認証されているお墨付きの環境や品質、安全にちゃんと取り組んでいる良い工場で、取引しても問題ないですよ、というアピールになります。
この、ISOとは何か?については別記事で触れるとして、これに基づく資料の管理が業務になります。尚、この資料ですが、各部門毎に存在し、作成・提出の依頼し、内容確認の上、問い合わせに対応と、意外と大変です。ただ、そうは言ってもおおよそ1年もすれば感覚も掴め、3年も経てば自分なりのアレンジができるようになります。
最後の③安全に基づく年間行事の実施です。これは各企業によって大きく異なりますが、おおよそ、全国安全週間や衛生週間等での防災訓練、安全パトロールやチラシ配布になります。
*記事6「全国労働衛生週間」や記事7「全国安全週間」も参考にどうぞ。
仕事は楽しいですか?
本日のタイトル「仕事は楽しいですか?」に繋がりますが、皆様、現実問題、仕事は楽しいでしょうか?
私も各種業務を担当して今の業務にいる訳ですが、正直、自分自身のことは意外と自分で感知することができず、大きなズレが存在するように感じます。
過去、私も楽しいと思える仕事に就きたいと努力しましたが、現実問題、そもそも働くことはそんなに楽しいことではなく、±0であるのならそれは相当な天職である、と考えるようになりました。
ただ楽しい・楽しくない、というのはよく分からないのに、ストレスというのは一番自分が理解できるもので、毎日会社に行きたくないとか、玄関の前で震えるや、訳もなく胃が痛い等、体にまで症状がでます。
この感覚に関して興味深いところは、適正というのは本当に個人差が大きいということです。
昔は、人間は努力によって誰であろうとも何でもできると思い込んでいましたが、やはり人には向き・不向きがあるようで、記事20「安全パトロールの現実と正しいやり方」で少し触れましたが、エゴグラムが示すように、人には傾向があります。
これが正解・不正解ということはありません。
ただ、その環境に適合しているのか、不適合か、というのは、はっきり存在しているのかなと考えます。
仕事と適正は考え方次第
さて、私から傾向をお伝えします。
偏見も入りますが、①お金を生み出す仕事は、子供の頃から人との比較や競争にある程度慣れている体育会系でなければ辛いと思います。言い換えると、昨今で話題の働かないおじさん問題等、仕事の評価が曖昧で、働かない年配者が多く給料を貰っている状況は存在し辛い明瞭な環境となります。
職場で自分より働かない人が多い環境と感じるのであれば、①は非常にオススメです。
勝ち負けで判定でき易い仕事で、向いている人はとことん向いているのかと思います。
尚、その逆で、勝ち負けでなく、人は平等であると考えるなら、「②お金を守る仕事」が良いと考えます。
管理系はとにかく失敗を無くす仕事です。過去、思いもしないことから失敗に繋がった事例があり、それをカバーするためにとんでもないルールが作られ、いまだに存在し続けていたりします。ただ、その理不尽なルールも、過去に悲惨なことがあって、それを守ることで一人でも不幸になる人を減らせるならば守ろう、と思える人であれば、この仕事は向いています。
安全衛生管理は狙い目?
以上から言えることですが、仕事は適性が全てを物語ります。
尚、別の話ですが、先日、市役所の公務員が怒られている姿を目にし、ちょっと内容を聞いてみたのですが、まぁ、理不尽な内容で怒っていました。
下記のような風景、住民票を取りに行ったときに見ませんか?
お前らはおかしい、間違っている、と言われていますが、規則だからそう言わざるを得ず、それ以上言えないのだろうなと思います。
「じゃあお前が政治家になって法律新しく変えろよ」、と言いたそうな顔を見ると不憫な気もしますが、別の角度で見ると、ああいうこと言われて嫌な気持ちにはなるけど、明日会社に行きたくないとか、胃が痛いとか、体にまでは支障がこない、いわゆる、ある程度何も思わない、または、納得している部分があるんだろうなと思います。
ある程度の仕事ができる、できないはあるにせよ、行きつく先は適正なんだろうなと感じました。
安全衛生管理は求められているのか?
昔から工場には「安全第一」が掲げられており、安全衛生管理業務は今もなお求められている仕事です。
ただ、勘違いして頂きたくないのは、「安全第一」と掲げている理由は、被災する可愛そうな従業員が一人でもなくなるように、可愛そうな気持にならないように、ではありません。
記事21で述べた通り、企業の存在目的は「利益の獲得=お金を生み出すため」です。よって、事故による損失が非常に大きい労災を防ぐために「安全第一」を掲げているのです。
以下、事故の賠償額を調べましたが、億を超える案件も多く、発生した場合に生じる損失はとても大きなものです。
* 関西医科大学事件(心筋梗塞死)(大阪地裁 平成14年2月25日・大阪高裁平成16年7月15日)判決認容額:1億3,532万円(ただし控訴審で8,484万円)
* いわき市立病院事件(包丁による失血死)(福島地裁 平成16年5月18日)判決認容額:1億3,228万円
*電通事件(自殺)(東京地裁 平成8年3月28日・東京高裁平成9年9月26日)判決認容額:1億2,588万円
* おたふくソース事件(自殺)(広島地裁 平成12年5月18日)判決認容額:1億1,111万円
* 大阪府麻酔科医急性心不全事件(急性心不全)(大阪地裁平成19年3月30日、大阪高裁平成20年3月27日)判決認容額:1億0,692万円(ただし控訴審7,744万円)
* 協成建設事件(自殺)(札幌地裁平成10年7月16日)判決認容額:9,164万円
高額化する過労死・過労自殺の賠償額~高額賠償事例 | 労働問題の窓口 (roudou-mado.com)
ちなみに、製品の不良を出した場合も億を超える保証が必要なケースも存在します。
ただ、交渉次第では、お金の代わりに製品を納入することで保証でき、製品価値で1億円であったとしても、実は製品の利益率が非常に高く損失は1000万円となった、なんてこともあり、一概に高いと言えません。
しかし、従業員は代替などできません。如何に労災が大きなリスクを秘めているのか、ご理解頂けたでしょうか?。
更に、最近はネットの発達から従業員も敏感になり、企業側も言い逃れが困難になったことから、労災隠しと勘違いされる行為自体を嫌う程、相当敏感になっています。
よって、安全衛生管理は、実は今なお求められている職業です。
どんな人が求められている?
いつもお世話になっている安全衛生アカデミーの黒崎先生が、要求される人物像について配信されています。
youtubeを見た感想ですが、これは40~50代の管理職相当かと思います。若い方は工場勤務経験があったり、衛生管理者の免状を取得している等で十分かと思います。
あるに越したことは無いので、参考にしてみて下さい。
あなたの仕事、適正はありますか?
長きにわたり、各種業務を担当した感想ですが、やはり時間とは凄い薬で、おおよその業務はできるようになります。ただ、受けるストレスはそれぞれのようで、仕事によって、人によって、同じ業務であっても辛さは異なるようです。
仕事ができる、できないを超越した、人間の根源において、何に喜びを感じるのか、どんな性格なのかが、その仕事での適正を決めるのかなと思います。
勿論、努力は必要ですが、今、あまりにも辛い人、安全衛生管理業務は狙い目かと思います。良かったら検討してみて下さい。
その他 福利厚生、その他メリット
正直な話、安全管理業務を専属化しているのは過去に相当痛い目にあった企業であり、過去の労災を反省し、安全のみならず従業員の環境を良くしようという福利厚生に力を入れている良い企業である可能性が高いです。
また、福利厚生が良いのは勿論、専属化に専属化を重ね、その業務のプロを育てることも重要視しており、専門知識獲得の観点からもお勧めします。
情報展開 転職エージェント
下記サイト、自身の適正を加味して、代理人が適職を探してくれます。少しでも工場、及び、安全衛生管理業務に興味が沸いた方、アクセスしてみて下さい。
また、下記動画の通り、「転職」にはリスクが伴いますが、「転職活動」にリスクはありません。自身の市場価値や適正も知る上で、良ければ参考にどうぞ。
正直、今の業務を見ていると、ひと昔前は閑職と呼ばれる、どこにも行けない人が行きつく場所だったのかもしれません。ただ、国もうるさくなり、保証額も跳ね上がり、更には、少々の事故では何も言わなかった従順な従業員も減り、企業も本腰を入れて対策をしないと訴えられる時代となりました。ひと昔にブラック企業として取り上げられた影響かと思いますが、働きやすい時代になったのかと思います。
今後、ますます良い人材が求められる安全管理業務ですが、そもそも専属者が少なかったこともあり、全体的に若い人が不足しています。私は狙い目であると考えますので、良ければ安全衛生管理の仕事、検討してみて下さい。
では、今日も一日、ご安全に。