記事20 安全パトロールの現実と正しいやり方
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第20回目は「安全パトロールの現実と正しいやり方」について紹介します。
*以下の教育資料ppを展開します。自由に編集下さい。
★目次
- 安全パトロールとは
- 安全パトロールの目的と重要性
- 安全パトロールの現実
- お互いのジレンマ
- 最悪のケース
- 正しい安全パトロールのやり方 理想編
- 正しい安全パトロールのやり方 現実編1
- 正しい安全パトロールのやり方 現実編2
- 正しい安全パトロールのやり方 現実 注意点
- 本記事を書くに至ったある呟き
- 理想の安全パトロール実施に向けて
安全パトロールとは
皆さんの職場はこんなイベントありますか?
平成30年度建設現場合同安全パトロール実施 - 一関支部 - いわけんブログ - 岩手県建設業協会 (iwaken.or.jp)
社長、サイトトップ、支部長等々、何らかの肩書を持った偉い方を先頭に、安全管理者達が列をなして職場を巡回するこの行事、業種によってはなかなかお目にかかることはありません。
ただ、建設業・製造業では一般的であり、名称を「安全パトロール」と言います。
*業種によっては安全巡視とも言うそうです。
安全パトロールの目的と重要性
記事10「業種別・事故の型別 災害傾向について」でも触れましたが、各業種まだまだ事故が多く発生しています。
そこで、工場トップが自ら巡視し、現場で直接指摘することで、強い強制力を持ってして労災を防止することこそ、安全パトロールの目的です。
尚、記事を検索しましたが、沢山の有用性を示すサイト、及び、より効果的に安全パトロールを実施する手法が紹介されていました。いくつか紹介します。
パトロールの役割は、「主に目で見てわかる不安全要素について、現場に存在する顕在化した、或いは潜在化している災害の芽をチェックリストを用いて確認し、探し、潰すこと」である。
安全パトロールの現実
では、そろそろ本題に入ります。
私の主観で恐縮ですが、安全パトロールは非常に嫌われています。
というのも、無理難題を言いたい放題現場へ要求し、仕事を増やす厄介な存在だからです。正直、まるで大名行列のように列をなす、面倒な集団と見られているんだろうな、と思う瞬間が多々あります。
大名行列イラスト - No: 1138270/無料イラストなら「イラストAC」 (ac-illust.com)
お互いのジレンマ
トップを含む安全管理者側は、自分たちの指摘は労災の防止に繋がり、感謝されるべきことと考えています。
一方、受査側の現場は、管理の甘い点を指摘され、仕事は増え、特には嫌味の一つまで言われます。現場のこと知らない人に言われても困るよ、と思っています。
と、お互いに色んな感情があることは考慮しつつ、おおよそ、無難に終わっていくのが安全パトロールです。
最悪のケース
ですが、たまに喧嘩にまで発展するケースがあります。
そして、行きつく先は必ず、「その指摘を行わなければならない根拠を教えろ」と「その根拠は納得できない」です。
実は安全パトロールで、強くて権力があるのは現場です。その指摘をする、しないを決めることができるためです。
*勿論、この強いとは、会社勤めであること、上司との関係性、人間味を一切排除した機械的に見た結果からの発言です。
正しい安全パトロールのやり方 理想編
喧嘩にもならず、お互いが満足する安全パトロールを実施するにはどうすればいいの?
という問いに、まずは理想を言います。
記事8「相互啓発型の安全文化」について、デュポン社が良い取り組みをしており、4段階目の相互啓発型、つまり、自身だけではなくお互いにとって安全な環境の形成が、労災を防止する効率的な方法である、と述べています。
要は、お互い歩み寄りが重要です。
安全パトロールの際、安全管理側は、指摘するにしても、どうしてこの指摘をするのか、どうしてできないのか事情を汲み取り、できる方法を提案しましょう。
現場側は、頂いた指摘に対して、何が問題でできていないのか、どうすればできるのか、もらった案を元に建設的な意見を言いましょう。
正しい安全パトロールのやり方 現実編1
安全管理側から見た感想ですが、おおよその人は常識的な発言を行い、困っている事情を言えば一緒になって考えてくれます。特に最近は、パワハラ対策の義務化に伴い、地位が高ければ高い程、親切です。
よって、言い換えると、少数の文句や理不尽なことを言う人を納得させれば、安全パトロールは効率的、且つ、円滑に進みます。
では、具体的な解決策ですが、まずはエゴグラムによる分析です。
これは、簡単に言うと、5つのパラメータ(CP,NP,A,FC,AC)から自身の自我が分かる心理テストです。まずは自身の心理傾向を客観的に見て下さい。
尚、エゴグラムにはいくつか種類がありますが、この記事が分かり易かったので紹介します。
上記のように、グラフで出てきます。
無料版、以下に貼っておきます。参考にやってみて下さい。
正しい安全パトロールのやり方 現実編2
次は、働きアリの法則とも呼ばれる、パレートの法則を紹介します。
*要約すると、全ての物事への評価は、ポジティブ/無関心/ネガティブの3層に分かれ、その比率が20% / 60% / 20%である、という経験則です。
これ、私もとても共感できる部分があり、労災が起こる部門も結局はネガティブ層=(文句を言う人)の多い部門で頻発すると感じます。
問題はネガティブ層ですが、まずは3層の特徴と対応方針を書きます。
ポジティブ層(20%)
ポジティブ層は、安全管理業務経験者、過去の労災被災者、友人等、経験者や担当者に好意のある人で構成されます。この層はおおよそ問題がありません。
無関心層(60%)
露骨に嫌な顔をする人もいますが、所謂サラリーマンであり、言うことはキチンと聞いて対応します。裏で陰口は言うも、基本的に害はありません。
ネガティブ層(20%)
本日の核心です。なんらかに不満のある人です。おおよそ、否定的、非建設的な意見を持ってして反論してきます。ただし、本当に聞かないといけない身に染みる意見も多いので、意見の聞き流しはしないで下さい。
*ただし、エゴグラムでも分かる通り、人はタイプ差が激しく、必ず20%のネガティブ層が存在します。よって、ネガティブ層の言うことは、必要な部分だけ抽出する、を心がけて下さい。仲良くなる必要はありません。
正しい安全パトロールのやり方 現実 注意点
ネガティブ層ですが、必ずしも間違ったことを言っているわけではありません。中には、面倒だし、大変だけど、大変重要な意見もあり、全てを蔑ろにしてはいけません。
ただ、あまり関わるとメンタル不調になるので、判断ポイントを言います。ズバリ、誰に対してもその意見を言うか、です。
役職者・担当者関係なく不満を言う人
このタイプは信念で動いており、大切な内容も多いです。ただ、よくよく聞くと面倒であることの回避も多々見られます。よって、なるべく、会話を長引かせてみて、そこでボロが出るのかが分かれ道になります。
担当者にしか不満を言わない人
おおよそ、自分の言い分を聞いて欲しい、自己愛性の高い方です。ためになる部分も少ないので、受け流して下さい。
本記事を書くに至ったある呟き
ここまで、対応方針について書きましたが、今回の内容を書くに至った一つの記事を紹介します。
ポンコツ現場監督@多能工(@NONAME00724)さん / Twitter
この呟き、なかなかに核心をついております。
本来、安全パトロールを有効に活用すれば、労災は防げ、現場も課題解決手法を知る良い機会となり、ハード対策に至っては予算も貰い易くなるので、活用次第では非常に有用です。
ただ、どうやら指摘側は上層部や管理者であるにも関わらず、二度と無いようにと現場へ対応を丸投げする姿勢、指摘を言い易い人と言い難い人がおり、集中的に言い易い人へ仕事が偏在化する職場、本来の趣旨から外れた叱責が目的となっている安全パトロールの実施、と課題が多いように推測されます。
*全く違う場合、すいません。
記事8「相互啓発型の安全文化」において、安全文化の発展段階では、「依存型」になると考えます。
記事8 労災を防止する効果的な方法とは?デュポン社から学ぶ相互啓発型の安全文化について - 安全衛生のタネとネタ (hatenablog.com)
尚、今回、NONAME00724さんの呟きを取り上げたのは、正直こう思っている職場、まだまだ多いのではないかな、と思い、会社管理者の皆様に状況を知って頂きたいと考えたからです。
特に、人手不足の現場はこの傾向が強く、安全文化の発展段階が「本能」にまで落ちてしまう例も少なくありません。
そして、この皺寄せはおおよそ、若手にきます。
理想の安全パトロール実施に向けて
大変難しいことですが、ほんの少しでも歩み寄る姿勢を見せ、安全パトロールの際は、安全管理、現場、共にコミュニケーションを密に取り、どうしてその対策が困難であるのか、その対策に対する解決案を出して議論する等、対話をお願いします。
また、お勧め私からのオススメですが、1つの指摘に対して、3つ褒めるを実施してみて下さい。指摘も重要ですが、良い点を抽出し、他の職場に展開することも重要です。沢山の良い点を見つけ、是非とも褒めてあげて下さい。
最後に本を紹介します。
今回のキーワード「対話」に着目した安全巡視の方法について書かれています。
良ければお買い求め下さい。
現場と安全管理、立場は違えど、従業員が安心して働ける環境作りという目線で見ると、本来同じところを向いています。しかし、現場は効率的な生産ができる体制を作り従業員に金銭還元を、安全管理はより従業員が安心して働ける環境を構築することで安全性を持って働けるように、と、お互いに用いる手法が異なるため、言い争いが絶えないと考えます。お金が儲かって、安全に働ける、こんな理想的な職場作りを目指すにあたって、手を取り合って、お互いに理解し合う、そんな企業が一つでも増えれば幸いと考えます。
では、今日も一日、ご安全に。