記事26 現場だけの事故?事務職も危険? 墜落・転落事例と対策紹介
脚立を踏み外して転落する人イラスト - No: 23108538/無料イラストなら「イラストAC」
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第26回目は「墜落・転落事例と対策紹介」です。
多くの方は、墜落・転倒により発生する労災の規模は大きいと感覚的に理解できるかと思います。一方、そんな危険な墜落・転落事故を自分たちには関係が無く、高所作業を専門とする方にしか起こり得ない労災と捉え、どこか自分ごと化ができていない感覚を持ちます。しかし、実際はごく身近な場面で起こり得る、日常的な労災です。本日はそんな危険な感覚を皆さんに共有して頂くためにも、本記事を作成しました。
- 墜落・転倒事故は緩やかに減少傾向ではあるも、発生件数自体は多く継続対策が必要。
- ハーネスを用いた対策が有効であるも、使用方法を誤ると効果が発揮されない。
- 脚立・はしご作業は危険性が高く、日常的に使用機会も存在することから取り扱いに注意が必要。特に、天板に立つ・座ることは絶対に避けること。
*本記事をPowerPointにまとめました。自由に編集し、安全衛生委員会等でご活用下さい。
★目次
おさらい
記事10で、各業種別に最も多い休業災害要因を調査して報告しました。
〇業種別・事故の型別 労災まとめ
「墜落・転落」 ⇒ 高所作業が多い業種:建設や運輸
「動作の反動・無理な動作」 ⇒ 重量物の取り扱いが多い業種:貨物・・・記事12
「転倒」 ⇒ デスクワークや接客系が中心の業種:商業や接客娯楽・・・記事11
「はさまれ・巻き込まれ」 ⇒ プレス機やロール等を扱う業種:製造業
建設業における墜落・転落の発生状況
墜落・転落について、その名称を聞いただけで重大災害に発展しそうと感じる方、多いのではないでしょうか?では、以下に、建設業界の災害発生状況を示します。
〇過去10年間の墜落・転落災害発生状況
墜落・転落災害撲滅に向けた取組み (kensaibou.or.jp)
墜落・転落の対策例
有効な対策例としてはやはりハーネスです。下記の保護具を見たことはありませんか?
このハーネスは、高所作業を行う際に装着し、以下のように所定位置に固定することで、万が一の転倒・転落を防止できる保護具となります。
ハーネス使用上の注意点
有効なハーネスですが、使用方法を間違えると全く効果が無いというデメリットがあります。いくつか例を紹介します。
〇落下距離の誤り
〇フックが滑る箇所に取り付け
*上記サイトより2件紹介しましたが、他の例も詳細まで分かり易く記載されています。展開しますのでご覧ください。
フックをかける際の注意点
また、以下をご覧ください。
上記は、「振り子状態にならない位置にフックを取り付けて下さい」、という注意喚起です。
ただ、他にも気になる部分がありませんか?
というのも、どうやって高所にフックをかけたのでしょうか?
このポンチ絵からは、保護具が機能していない状態で高所に登り、フックをかけたとしか思えません。
尚、以下の様にフックをかける部分を手繰り寄せられる構造とすることが対策となります。安全な場所で装着した後に作業を行うことが重要です。以下、情報展開します。
セイフティブロック | 「TITAN」墜落制止用器具のサンコー株式会社 (sanko-titan.co.jp)
事務職にも多い転落・転落事故
さて、久しぶりにKYTを実施しましょう。以下、危険と想定される箇所は何でしょうか?
脚立|安全な使い方|安心・安全 正しい使い方ガイド|アルインコ株式会社(ALINCO)
*KYTの実施において、以下記事も参考にどうぞ。
こちら、何がいけないのか疑問に思う方、多いのではないでしょうか?
では、以下をご覧下さい。
(下記リンクより動画も視聴下さい。参照 シーン4:脚立をまたいで使用中 扉を開けた拍子に転落)
動画:脚立・はしごからの転落-スタントマンによる再現例-(発表情報)_国民生活センター (kokusen.go.jp)
実は、天板(脚立の一番上の段)に乗る、または座って作業を行うと、扉を開ける等、急激に後方へ重心が移動すると、そのまま後方に倒れることとなります。
意外と盲点な脚立作業
少し前のデータで恐縮ですが、はしご・脚立の製品別事故件数を以下に掲載します。
〇年度別の製品別事故発生件数
はしご・脚立どちらも毎年一定数の事故が発生し続けており、まだまだ注意が必要です。
先ほどの動画の通り、転倒時に頭をぶつければ、重大災害になり得ることが容易に想像できると思います。
これから年末にかけて大掃除が始まります。クーラーのフィルター掃除や電球の交換等、脚立やはしごを使った高所作業において、事故発生が懸念されます。
事故の規模と発生可能性
安全パトロール中、脚立作業において対策をお願いする機会があります。しかし、作業頻度が年に数回と少ないことから、作業者や管理者の方から「殆ど行わない作業だから大丈夫です」という言葉をよく聞きます。
(何が大丈夫なのか?という突っ込みはここでは敢えて控えます。)
対策は面倒であり、したく無い気持ちも分かるのですが、リスクが残り続け、事故発生が懸念され続けることとなります。
以下、記事2「リスク」について、「リスクアセスメント」= 「 事故発生の可能性や度合いを調査・評価すること」と紹介しました。
その際、リスク(災害や事故が発生する可能性や度合い)は、
①:発生した場合の事故の規模
②:事故発生の可能性
から算出することを紹介し、対策の優先順位を決めるよう説明しました。
よって、確かに①が低いと評点も下がることから、優先順位も同様に下がります。ただし、今回の脚立やはしごを用いた高所作業は、一歩間違えると重大事故になり、事故件数も一定して発生していることから、②が高くなり、優先順位は下がり辛いと考えます。
また、優先順位が低いことは、対策が不要ということではありません。ご注意下さい。
安全 = 許容不可能なリスクの排除 を行うことです。
終わりがない話ですが、安全確保には継続しか無いと考えます。
*以下記事も参考にして下さい。
繰り返し恐縮ですが、高所作業は重大事故になり易く、死亡事故も多く発生しています。また、脚立やはしごを用いる作業は、高所作業を専門とする業種以外でも日常的に行われ、意外にもその重大性は認知されていないケースが多いです。管理・監督者は安全配慮義務もあり、認知しているにも関わらず安全対策を行わないことから、罰せられるケースも存在します。
労災は誰の得にもなりません。労災が発生する前に対策を行い、皆が安全に過ごせる環境構築にご協力下さい。
では、今日も一日、ご安全に。