記事19 価値観の違いから考察 外国人労働者への安全衛生教育について
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第19回目は「外国人労働者への安全衛生教育」について紹介します。
- 1973年より現在に至る約50年間、出生数は低下し続けている。
- 既に外国人労働者人口は増加傾向にあり、共存の手法を考えることが大切。
- 共存への課題は価値観が大きく異なることで、歩み寄り理解しようとする姿勢が重要。
- 歩み寄りには対話が有効で、母国語用教材を元に意見交換すると良い。
- 母国語での対話が最良だが、習得が困難であれば、まずは世界共通語の英語習得を目指し、動画や単語帳での勉強を推奨する。
*以下の教育資料ppを展開します。自由に編集下さい。
★目次
- 〇おさらい
- 〇少子高齢化の秘策
- 〇国内がダメなら国外から
- 〇現在の就労状況
- 〇今後の動向
- 〇大きな課題
- 〇価値観の違い
- 〇外国人労働者への安全活動
- 〇教材紹介
- 〇言語の壁
- 〇言語習得の方法
- 〇その他 ピクトグラムを用いた啓発
〇おさらい
記事17「高齢者の労災と対策方法」にて、少子高齢化について書きました。
記事のおさらいですが、今後の日本は「人口減少。若年層は減り、高齢者は増える」という厳しい予測が立てられ、以下の通り、平均寿命も延び続ける見込みで、更に少子高齢化は継続の可能性が高い、という内容でした。
尚、人口ピラミッドは、2045年には以下の様に想定されています。
統計ダッシュボード - 人口ピラミッド (e-stat.go.jp)
以下の動画、とてもスタイリッシュで分かり易かったので、こちらも展開します。
グラフより、社会保障を支える生産人口が今後ますます減少します。
政府は対策として、定年延長による労働人口の底上げで、65歳以上でも働ける体制作りを進めています。
〇少子高齢化の秘策
本来、少子高齢化は子供を増やすことが最優先事項です。
しかし、政府は半場諦めています。というのも、1973年以降、殆ど効果が出ていないためです。
以下、出生数及び合計特殊出生率の年次推移を示します。
令和3年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版) (cao.go.jp)
グラフより、1973年より現在に至る約50年間、殆ど効果は出ていません。
〇国内がダメなら国外から
次の政府試作は女性の社会進出促進です。共働き世帯を増やすことで労働人口の確保を図りましたが、同様に、こちらも限界があります。
そして、現在の主流対策は、外国人労働者の獲得です。日本は少子高齢化ですが、世界で見ると、若年者の多い国は沢山あり、そこからの労働者獲得を図るという内容です。
*平均年齢を示します。以下の表にありませんが、日本の平均年齢は48.36歳です。
平均年齢ランキング - 世界事典 (theworldict.com)
〇現在の就労状況
尚、既に外国人労働者人口は増加の一途を辿っています。以下、産業別に見た外国人労働者人口の推移を示します。
PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)
・「製造業」が最多の48.2万人で外国人労働者全体の28%。
・「サービス業」が27.6万人(同 16.1%)
・「卸売業、小売業」が、23.2万人(同 13.5%)
・「宿泊業、飲食サービス業」が20.3万人(同 11.8%)
次に、国籍別に見た人口推移です。
・ベトナムが最も多く44.4万人で、外国人労働者全体の25.7%
・中国が41.9万人(同 24.3%)
・フィリピンが18.5万人(同 10.7%)
・直近推移で見ると、ベトナムが前年比で10.6% (4.3万人)増と増加率が高く、次いでネパールが同 8.6%(0.8万)増、インドネシアが同 4.0%(0.2万人)増
〇今後の動向
以上、外国人労働者の就労について、現状を書きました。
現状から、既に外国人労働者は急激な増加傾向にあり、政府としても他に納税者を増やす手立ても無く八方塞がりで、今後も就労者数は増加すると想定されます。
〇大きな課題
では、本題です。
この、共存について考えることが重要と言いましたが、正直に言うと、ハードルはかなり高いです。色んな課題はありますが、本記事では安全について取り上げます。
では、一見は百聞にしかず、と言いますので、まずは以下をご覧下さい。
清掃 -フィルターの清掃|事務・一般|危険予知訓練(KYT)無料イラストシート集|(一社) 安全衛生マネジメント協会 (aemk.or.jp)
点検 -屋上の点検|事務・一般|危険予知訓練(KYT)無料イラストシート集|(一社) 安全衛生マネジメント協会 (aemk.or.jp)
この画像は、記事15回目「KYT(危険予知訓練)の正しいやり方」にも書いた、KYTシートです。
本来でしたら、画像から読み取れる危険を共有し、対策を立案します。ただ、今回はこの人の服装や靴、脚立の器具等をご覧下さい。作業を行う上で日本人が最低限と考える基準で作業内容が描かれています。
では、現地の実作業をご覧下さい。
さて、上記は軒先の延長工事ですが、仮にこれをKYTの題材にすると、指摘箇所が異常な件数となり、これを通常作業としている方との価値観が大きく異なることに困惑されるかと思います。
*更に、この方、飲酒されているようです。
以下はいかがでしょうか?
【危険がいっぱい】ネパールでの建設作業!(クイズあり!!) - 空のちょっと下で (mrsora.com)
安全帯が無い、保護具が無い、転落防止措置が全くない等よりももっともっと根源から、何らかの眩暈がしそうな違和感を感じたのではないでしょうか。
*なお、私も位置が分かっていなかったので紹介しますが、本画像のネパールは以下の地図を参照下さい。「カカニ」も検索すると出てくるのですが、ネパール真ん中あたりでしょうかね。
〇価値観の違い
海外の災害は、日本では考えられない前提から、違和感を覚える事故があります。
ただ、私の言いたいことは、「外国人は安全意識が低い」や「外国人は想像力が低い」等ではありません。
ズバリ、「日本人の価値観は世界と大きく異なり、寧ろ浮いているのではないか?」です。
下記、いくつか記事を探してきましたが、諸外国から見た日本人のイメージはよく言えば清潔で、中国メディアからは潔癖とまで言われています。
①
「清潔な国」日本に対する海外の反応:各国メディアが報じる新型コロナ感染者数から「見習うべき日本の姿」とは? | 訪日ラボ (honichi.com)
②
なぜ日本人はみんな潔癖なのか―中国メディア (recordchina.co.jp)
〇外国人労働者への安全活動
先ほども述べたように、価値観が絶対的に異なります。
その中で、記事8「相互啓発型の安全文化」で述べた通り、安全文化の形成には「相互啓発型」=「お互いにとって安全な環境を形成しようとする意識」まで高める必要があります。
よって、互いに知ろうとする姿勢、及び、自身が間違っているかもしれないと疑い、歩みよる考え方が大切です。
言い換えると、先ほどの写真を見て、「この国の人は危険だ」と感じた方は、既に指標が自身であり、他責思考であるとも言えます。勿論、人間は誰しもそう思うでしょうが、安全管理を行う上では、必ず歩み寄る姿勢を持つように心がけて下さい。
よって、私からの安全教育のオススメは、まずはその方の言語で教材を見て、思ったことや感じたことを共有して下さい。
歩みよりの第一歩は対話です。外国人労働者の方も日本人でカルチャーショックに驚かれているでしょうから、感想を共有してみて下さい。
〇教材紹介
その中でも、下記の動画が一番分かり易かったので紹介します。
各言語毎にまとめられ非常に見やすいです。
職場のあんぜんサイト:各種教材・ツール (mhlw.go.jp)
尚、外国人向け安全衛生教育実施に関しては電話相談も可能で、必要な方は下記をご覧下さい。
公益社団法人東京労働基準協会連合会:厚生労働省委託 外国人安全衛生管理支援事業 (toukiren.or.jp)
テキスト関連は各言語毎に以下にまとめられています。書籍で必要な方、下記からお買い求め下さい。
〇言語の壁
日本に来るので、最低限の単語は勉強済であると思いますが、どんな人でもネイティブと同等にはなれず、理解・共感し辛い部分が生じます。
その際、現地語で話せれば良いのですが、習得に時間がかかり、言語には種類も多いので非常に困難です。
となると、世界共通語である「英語」で会話できるのかがキーポイントになります。
〇言語習得の方法
2つ紹介します。
①動画講義
発音を含め、専門講師の方から学ぶことが一番効率的です。TOEIC用の講座を紹介しますので、良かったら下記よりどうぞ。
②独学ー単語帳
会話に必要なのは、とにかく単語です。
「あの機械のメンテナス終わったっけ?」の場合、「maintenance finish ?」と言えば、80%は伝わります。逆に言うと、単語が分からなければ殆ど会話できません。
以下、暗記し易い英単語帳を展開します。これを丸暗記すればとりあえず会話ができます。
勉強の際は、記事16「効率的な資格取得方法」をご参照下さい。
〇その他 ピクトグラムを用いた啓発
言語が異なる場合、絵だけで啓発が可能な「ピクトグラム」が有効です。PDFでも展開されており、ラベル紙に印刷すればそのまま使用できるのでオススメです。
ピクトグラム(外国人にもわかりやすいサイン表示)/壱岐市 (city.iki.nagasaki.jp)
一応、ラベル紙も展開しておきます。以下、耐久性がありオススメです。
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外国人労働者の受入れは今後ますますの拡大が予測されます。ただ、受入れ態勢が不十分なままでは、外国人労働者、受入れ企業の管理者等、お互いに不利益を被ります。今の内から少しづつ用意していく姿勢が大切と考え、今回の記事を作成するに至りました。
また、今回のお伝えしたい肝となる「価値観」はなかなか表現し辛い部分でした。そんな中、今回、たまたま良い教材となる現地KYTを見つけましたので、ブログのご紹介を兼ねて掲載しました。wasenkin(ワセンキン)様、有難うございました。
では、今日も一日、ご安全に。