第17回 高齢者の労災は増加? 年齢・事故の型から見る発生率と安全対策紹介
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第17回目は「高齢者の労災と対策方法」について紹介します。
*以下の教育資料ppを展開します。自由に編集下さい。
★目次
- 〇高齢者は増加傾向
- 〇高齢化の予測推移
- 〇定年の延長が予想
- 〇支援機構の取り組み
- 〇高齢者の労災とは?
- 〇業種別、事故の型別、高齢者の頻発する労災は?
- 〇対策 好事例の紹介
- その他の良事例
- 〇転倒対策 オススメグッズ
〇高齢者は増加傾向
先日、たまたま以下の記事を見つけました。
「100歳以上の高齢者 初の9万人超 52年連続で過去最多を更新」
国内最高齢は大阪 柏原市の女性、巽フサさん、115歳です。
最近お元気な高齢者をよく見かけますが、まさか最高齢が115歳とは驚きでした。
〇高齢化の予測推移
日本の人口分布予測を以下に示します。
パッと見ただけで、今後も高齢化がますます進行することを容易に読み取れます。
人口は減り、若年層は減り、高齢者は増える、こんな厳しい予測が立てられています。
また、以下の通り、平均寿命も延び続ける見込みです。
〇定年の延長が予想
高年齢者が活躍できる環境の整備を目的に、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正、施行されました。*令和3年4月1日
要は、雇用確保が65歳までは義務、70歳までは努力義務になりました。
〇支援機構の取り組み
今日は非常に暗い話題ですが、高齢化においては就職を支援・推進している団体もありますので紹介します。
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)
内容を見て感じることは、社会的に非常に良い活動を展開していますが、高齢者の労働人口増加に伴う災害増加が懸念されます。
〇高齢者の労災とは?
近年、健康・元気な高齢者が増えました。とはいえ、高齢に伴い、体の限界を訴える声はまだまだ多いのが現状です。
更に、体調も労災発生の要因ですが、単純に生涯労働時間が延びるとそれだけ労災発生の確率は増加します。
現状は以下を参照下さい。
また、年齢別の災害発生割合ですが、高齢者は3万3千人以上です。これは他年代と比べて如何に多いのか、以下の図からお読み取り下さい。
〇業種別、事故の型別、高齢者の頻発する労災は?
頻発する高齢者の事故ですが、業種別に見ると以下となります。
データ出所︓労働者死傷病報告(令和2年)
労働⼒調査(基本集計・年次・2020年)
※1年間の平均労働者数として、「役員を含んだ雇⽤者数」を⽤いている
次に事故の型別です。
※千⼈率=労働災害による死傷者数/その年の平均労働者数×1,000
※便宜上、15~19歳の死傷者数には14歳以下を含めた
データ出所︓労働者死傷病報告(令和2年)︓労働⼒調査(基本集計・年次・2020年)
男性は「墜落・転落」、「交通事故」で顕著な増加が見られます。
女性はもっと顕著で、「転倒」にて増加が見られます。
〇対策 好事例の紹介
実例から良い対策例を紹介します。
今回は「墜落・転落」の原因にも直接繋がる「転倒」防止対策を重点に紹介します。
*交通事故は重点記事としたいので、別記事にて記載とします。
〇転倒防止対策 (味の素株式会社 川崎事業所)
各個人の身体能力について事前アンケートを取り、実測結果と対比して差異を示すことで、自身の能力だけでなく、どの程度思い込みがあるのかも明確にできる取り組み。
〇転倒防止対策 (株式会社平和堂)
靴の交換基準を定め、チェックリストで点検している。
その他の良事例
腰痛や熱中症に関しても良い事例があったので紹介します。
〇腰痛防止対策 (医療法人社団翠会 蓮根ひまわり苑)
スライディングボードの導入により、腰痛防止の効果を上げている事例
〇熱中症防止対策 (綜合警備保障株式会社)
「心拍数」を基準にした警備員の熱中症対策について実証実験を実施している事例
〇対策例 パンフレット
更に、厚労省より対策例のパンフレットも展開します。参考にどうぞ。
「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(8ページ版、令和4年7月)
〇転倒対策 オススメグッズ
今回は転倒に着目しましたが、転倒対策の一つに「靴」があります。
いくつか製品を紹介します。
〇介護シューズ
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〇コロンブス ハンディユキダス
男女兼用 フリーサイズ(22~28cm) 1足分
〇滑り止めシューズクリーナー
ミカサ(MIKASA) 体育館用 MST-30
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以下、靴の選定において、厚労省の啓発チラシも参考にどうぞ。
尚、「記事11 転倒災害の具体的な対策例とその手順」において床材質のマップ表示も紹介しております。あわせてどうぞ。
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/houkoku/supermarketslip_201612.pdf#zoom=100
高齢化の進行は暗いニュースに感じる方も多いかと思います。ただ、熟練者が増加して初心者が減少する、という観点で見ると、本来労災は減少傾向にいくはずです。更に若いころにした失敗を伝承する人が増え、その伝承を元に安全文化が発展すると仮定した場合、一概に高齢化を悪と捉える必要はないとも考えます。
この高齢化をどのよう捉え、安全対策を行うのかは、企業自体の明暗を分けることにも繋がります。難しい部分があることも理解しますが、是非ともポジティブに捉えて頂き、積極的な安全活動の推進、並びに、安全対策への投資をお願いします。
では、今日も一日、ご安全に。
併せて、本も紹介します。興味のある方は職場に一冊お買い求め下さい。
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