記事11 転倒は重大労災?実例から紹介する正しい転倒対策とその手順
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第11回目は「転倒災害の具体的な対策例とその手順」についてです。
*類似記事も紹介します。参考にどうぞ。
★本日の要点
- 転倒による労働災害は全体の約25%を占め、約6割が休業1か月以上の怪我と申告な労災となっている。
- 対策の優先順位は優先度高い順に、「危険な作業の廃止・変更」、「 工学的対策」、「管理的対策」、「個人用保護具の使用」である。
- 転倒の要因は、滑り・つまずき・踏み外しの3種類である。
- 転倒対策例として、マーカー設置、マップ作成、滑り易さの数値化、安全通路の整備、アスファルトで段差を埋めスロープ設置を紹介した。
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〇おさらい
記事10で、各業種別に最も多い休業災害要因を調査しました。
「墜落・転落」 ⇒ 高所作業が多い業種:建設や運輸
「動作の反動・無理な動作」 ⇒ 重量物の取り扱いが多い業種:貨物
「転倒」 ⇒ デスクワークや接客系が中心の業種:商業や接客娯楽
「はさまれ・巻き込まれ」 ⇒ プレス機やロール等を扱う業種:製造業
今後、上記から1件抽出して、具体的な対策方法をお伝えします。
今回は「転倒」を選定します。
〇「転倒」の概要
意外ですが、転倒は非常に深刻な労災です。日常に発生しうる最も身近な事象ですが、転倒による労働災害は全体の約25%を占め、約6割が休業1か月以上の怪我です。更には、厚労省がプロジェクトを立ち上げ災害防止を啓発しています。
以上より。転倒は、対策優先度が高く、十分に対策を行うべき労働災害と言えます。
〇対策の手順
記事2に記載の通り、まずはリスクの特定⇒分析⇒評価を行い、対策の優先順位を付けます。その後、実際に対策を行いますが、対策にも優先順位があり、法令遵守事項を大前提として以下の通り進めます。
*リスクアセスメントの導入・実施手順
リスクアセスメントにおいてライオン=危険源として説明した有名な図です。
では、作業例を挙げて説明します。
作業例
倉庫内の給食用食材が入った段ボールを両手で持って調理釜前まで運搬する作業がある。現在、倉庫はかなり古く、倉庫入口付近の道路に凹凸が目立ち、転倒の恐れがある。
対策例
1 危険な作業の廃止・変更 ⇒ 献立変更で運搬作業自体廃止
2 工学的対策 ⇒ 道路凹凸補修
3 管理的対策 ⇒ 凹凸注意の明示、正しい運搬方法の教育
4 個人用保護具の使用 ⇒ ヘルメット、プロテクター装着
まずは1から検討し、難しければ2以降を検討するようにして下さい。
〇「転倒」要因
以下の通り、転倒には3つ要因があります。
以下、対策例を紹介しますが、どの要因に有効であるのか、注目して頂ければと思います。
〇対策例 マーカーの設置
上記3つの要因において、注意すべき点をマーカーに示すことでどの要因にも対応できます。更には、以下のようにマップを作成し、設置したマーカーを表記することで、見える化できて情報共有が可能となります。
職場のあんぜんサイト:STOP!転倒災害プロジェクト:危険箇所の表示等の危険の「見える化」 (mhlw.go.jp)
下記、マーカーサンプルを展開します。自身の職場でも有効活用下さい。
〇対策例 滑り易さマップ
応用例として、滑りに特化した対策例も紹介します。マップ作成は上記と同様ですが、各箇所の滑り易さを測定して数値で表示することで、より危険性が伝わり易くなっています。
〇対策例 安全通路の整備
〇私の失敗談
ここからは私の経験談を記載します。
以前、職場建屋入口にある約10cm程度の段差における転倒対策時の話です。
当初、以下の段差スローププレートを設置しようと考えました。
理由は、・軽い ・安い ・見栄えも良い ・耐久性も高い
と1500円程度にも関わらず相当高い性能から下記を即決しました。
アイリスオーヤマ製: 段差スローププレート
ただ、結論から述べると断念しました。以下が理由です。
・既製品は高さが一律10cmだが、実際の段差は10cm前後で均一の高さでなく、不適合部分が逆に細かい段差を発生させ、転倒を誘発するため。
・泥等付着防止用の表面加工が滑り易く、水が付着するとさらに滑り易くなるため。
・軽いため風でズレ易いため。コンクリートとビス固定可能だが器具が無かった。
正直、車庫前等、車通行が想定される場所であれば十分な性能と思います。ただし、今回のように、人の通行には不向きでした。
*性能自体は非常に高いので、ご興味あれば下記からどうぞ。
結果的に、固まる前のアスファルトを自身で塗り固めてスロープを作成しました。使用した製品を以下に示します。
前田道路株式会社製:全天候型高耐久型常温アスファルト合材 マイルドパッチ 20kg
使用方法の動画も見つけましたので、展開します。
参考:Tas Tech Co., Ltd.様 マイルドパッチで段差を補修してみました - YouTube
上記、使用した感想として、
・取り扱いが非常に簡単。開けて、撒いて、スコップで形を整えて、水を撒いて作業終了。
・見た目も良く、予想以上に頑丈。
・硬化中の成形も容易で加工が簡単。スロープも難なく作成できた。
*なお、注意点も記載します。
・早く固まるが、完全硬化には2~3日見た方が無難。
・押し固めるため体積が予想以上に減り、想定必要量の2~3倍は購入した方が良い。
・土等、柔らかい素材の上に施工する場合、レンガや石を敷いた後に施工すると良い。
*本件、非常におすすめです。購入は下記からどうぞ。
★管理人からのコメント
今回は自身の失敗談も交えつつ、実際の対策例を紹介しました。読者の皆様も、良い対策例があれば是非教えて下さい。また、今回は転倒に焦点を当てましたが、今後は転倒以外も対策例を紹介したいと思います。
では、今日も一日、ご安全に。