記事8 労災を防止する効果的な方法とは?デュポン社から学ぶ相互啓発型の安全文化について
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第8回目は「相互啓発型の安全文化」についてです。
★本日の要点
- 安全文化とは、組織と個人が安全を最優先する風土や気風を指し、これを構築することで労災は防止できる。
- 安全文化の発展経緯は4段階あり、最終段階の「相互啓発型」=「お互いにとって安全な環境を形成しようとする意識」まで高まれば労災は防止できる。
*以下の教育資料ppを展開します。自由に編集下さい。
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◆詳細(~以降は興味のある方のみご覧下さい~)
〇デュポン社とは?
創業が1802年の古参企業で、昔は火薬や爆弾を製造し、今では世界トップクラスの化学メーカー。
〇デュポン社の安全への取り組み
デュポン社は安全活動について、数々のお手本を生み出しており、以下に数件紹介します。
・安全管理はライン管理者の責任であることを規則に明記して明確化
・安全性に関する最初の統計調査実施
・「目標は事故ゼロ」というコンセプトを確立
1811 年,最初の安全規則が作られ,安全はライン管理者の責任であることを明確にした.「新しい,あるいは組み換えた粉砕機は,トップ管理者が自ら動かした後でないと従業員は使ってはならない」.これは創業者である E . I . DuPont が述べたわが社の歴史で最も有名な訓辞である.この訓辞では「変更管理」についても強調している.1912 年,安全性に関する最初の統計調査が実施された.1940 年代には,「すべてのケガは防ぐことができる」という信念が,われわれの安全へのアプローチの基盤となった.さらに最近 10 年間には「目標は事故ゼロ」というコンセプトが確立されてきた.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/2/47_66/_pdf/-char/ja
「デュポン社 200 年の安全ノウハウに基づくリーダーシップ」p1~2参照
更に調査すると、記事4でも説明した、各事業所で実施している安全衛生委員の上位版「中央安全衛生委員会」が設置され、毎月役員が参加しているそうです。
*なお、法令上、中央組織を設置する必要までは無く、あくまで自主的活動です。
法令では設置義務のない、会社経営陣が出席する「中央安全衛生環境委員会」が毎月開催されている。その下位組織として各事業所において安全衛生(環境)委員会が設置されている。コアバリューミーティングは各事業所の委員会の下に構成されているもので、役員をはじめ全ての社員が参加することになっている。
参考:200年かけて構築した組織文化 安全は絶対的な理念 | 事例から学ぶ | リスク対策.com | 新建新聞社 (risktaisaku.com)
このように、安全に関するトップレベルの取組を継続実施するデュポン社ですが、安全文化を構築することで、労災を防止できると述べています。
*安全文化とは、1986年にチェルノブイリで発生した原子力事故の原因調査と検討の結果をきっかけに生まれた考え方で、組織と個人が安全を最優先する風土や気風のこと。
安全文化(セイフティカルチャー)
「安全文化(セイフティカルチャー)」という考え方は、1986年に発生したチョルノービリ(チェルノブイリ)事故の原因の調査と検討の結果をきっかけとして生まれました。調査にあたった国際原子力機関(IAEA)の国際原子力安全諮問グループ(INSAG=International Nuclear Safety Advisory Group)は、事故の原因を分析していく中で、この事故の根本的な原因として、そもそも現場の作業者も、また原子力発電所の運転にあたっている事業者も、そして国レベルでも、原子力の安全に対する考え方や意識そのものに問題があるのではないか、それは「文化」と呼べるほどの深さと広さをもって、個人や組織あるいは社会の意識や行動を左右しているのではないかとの疑問を提起しました。
1992年にINSAGは報告書をまとめ、その中で、
安全文化とは、『原子力施設の安全性の問題が、すべてに優先するものとして、その重要性にふさわしい注意が払われること』が実現されている組織・個人における姿勢・特性(ありよう)を集約したもの。
と定義しています。つまり、「安全文化」とは、組織と個人が安全を最優先する風土や気風のことです。
〇安全文化を構築する方法
デュポン社は、安全文化の構築には以下3つの信念と明確な期待が重要であり、安全意識を向上することで労災は防止できると述べています。
- すべての事故は防ぐことができる
- あらゆる作業状況は管理することができる
- 優秀な安全は良いビジネスである
安全文化を構築するには,一貫した強い信念と明確な期待が重要である.信念とは,① すべての事故は防ぐことができる,② あらゆる作業状況は管理することができる,および,③ 優秀な安全はよいビジネスであるということである.あらゆる事故は防ぐことができるという信念は,わが社の従業員,特にリーダーにとって明確な指針である.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/2/47_66/_pdf/-char/ja
「デュポン社 200 年の安全ノウハウに基づくリーダーシップ」p2参照
この安全文化の発展経緯を4段階に分けて説明します。
*上記サイト内の「デュポン・ブラッドリーカーブの図(出典:デュポン)」参照
〇安全文化の発展段階
第 1 段階:反応型
法令遵守がゴール。経営層も興味が無く担当へ丸投げの状態。
第 2 段階:依存型
経営者・監督者・安全担当者の指示や強制、または、雇用条件・ルール・手順書等に記載事項、及び、トレーニングでの学び等、自発性が無く指示に従っている状態。
第 3 段階:独立型
メンバー各自が個人的に安全活動に関与している状態。安全知識も習得し、習慣化もできているが、自身への配慮が優先され、自己満足の状態。
第 4 段階:相互啓発型
安全活動に積極的に取り組み、内容をメンバーで共有し、活動内容もメンバーや組織等、自身以外の全ての人にとっての安全な環境づくりを目的としている。
*以下サイトも分かりやすかったので、紹介致します。
上記のように4段階を経て安全文化は形成され、4段階目の相互啓発型、つまり、自身だけではなくお互いにとって安全な環境の形成が、労災を防止する効率的な方法、となります。
★管理者からのコメント
安全文化の発展段階について、あなたの企業は何段階目ですか?正直、多くの企業は2段階目前後かと思います。これを機に意識向上を目指して頂ければ幸いです。その際、お互いの意見を聞く、いわゆるコミュニケーションを図るとより効果的です。
では、今日も一日、ご安全に。
記事7 全国安全週間とは?
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第7回目は「全国安全週間」についてです。
★本日の要点
- 全国安全週間は、安全活動の推進・定着を目的に、自主的活動を実施する週間
- 毎年7/1~7/7に実施しており、今年で第95回目を迎える。
- (衛生週間は73回で安全週間の方が歴史が古い)
*教育資料を展開します。
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◆詳細(~以降は興味のある方のみご覧下さい~)
全国安全週間を要約すると、
「安全活動の推進・定着を目的に、自主的活動を実施する週間」です。
全国安全週間は、昭和3年に初めて実施されて以来、「人命尊重」という基本理念の下、「産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図ること」を目的に、一度も中断することなく続けられ、今年で 95 回目を迎える。
*引用:(別添資料)令和4年度全国安全週間実施要綱
詳細内容は下記が分かりやすいので、展開します。
具体的な実施内容はリーフレットを参照下さい。
★管理者のコメント
こうしてみると、衛生週間も安全週間も歴史が古く、それぞれに災害防止への願いが込められています。安全週間は今年は実施済となりますが、来年度は衛生週間(記事6)と同様に、目的や実施内容を改めて確認してみて下さい。
では、今日も一日、ご安全に。
記事6 全国労働衛生週間とは?
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第6回目は「全国労働衛生週間」についてです。
*教育資料を展開します。
★本日の要点
- 全国労働衛生週間は、健康確保を目的に、労働者の衛生意識を高めるため、自主的な活動を実施する週間。
- 毎年10/1~10/7に実施しており、今年で第73回目を迎える。
★管理者のコメント
昭和25年に第1回が実施されて以来、今年で第73回を迎える「全国労働衛生週間」ですが、多くの企業が継続実施しています。ただ、いつの間にか担当者も変わり、その意味の伝承も薄れ、なんとなく実施している、ということはありませんか?この機会に目的や実施内容を改めて確認してみて下さい。
◆詳細(~以降は興味のある方のみ~)
全国労働衛生週間を要約すると、
「健康確保を目的に、労働者の衛生意識を高めるため、自主的な活動を実施する週間」です。
全国労働衛生週間は、労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高め、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどを目的に、昭和25年から毎年実施しており、今年で73回目になります。毎年9月1日から30日までを準備期間、10月1日から7日までを本週間とし、この間、各職場で職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、さまざまな取り組みを展開します。
毎年10/1~10/7に実施しており、今年で第73回目となります。
詳細については以下が分かりやすいので展開します。
具体的な実施内容は以下となります。
eisei_leaflet2022.pdf (jisha.or.jp)
引用:全国労働衛生週間リーフレット(広報用)(PDF 630KB)
上記は全て実施頂くことが望ましいのですが、実際は業種や部門により実施困難、または非該当の項目も多いため、重要項目をいくつか選定して実施するケースが多いようです。
最後に、似た週間として「全国安全週間」があり、次回掲載します。
では、今日も一日、ご安全に。
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記事5 災害統計データから見た傾向
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
OSH関連情報を展開します。
さて、第5回目は「災害件数推移とその傾向」についてです。
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本日の要点
- 死亡者・休業災害4日以上の死傷者は減少傾向。一方、減少の程度は頭打ちで、令和3年度は増加。
- 事故の型別での死亡要因 1位「墜落・転落」、2位「交通事故」、3位「はさまれ・巻き込まれ」
- 事故の型別での休業災害要因 1位「転倒」、2位「墜落・転落」、3位「動作の反動・無理な動作」
- 死亡・休業要因の上位3位が全体の5~6割を占める。
まず、労働災害による死亡者・死傷者数の推移をご覧下さい。
出典
令和3年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
*【別添】令和3年労働災害発生状況[PDF形式:944KB]
現時点での最新データを確認しました。昭和から見ると、死亡者・休業災害4日以上の死傷者は減少傾向にあります。しかし、ここ最近で比較すると減少の程度は頭打ちで、令和3年度は増加しています。
次に、事故の型別労働災害発生状況です。
出典
令和3年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
*【別添】令和3年労働災害発生状況[PDF形式:944KB]
該当する事故の型の内、上位を抽出すると、
●死亡者数
1位「墜落・転落」、2位「交通事故」、3位「はさまれ・巻き込まれ」
●休業災害4日以上の死傷者
1位「転倒」、2位「墜落・転落」、3位「動作の反動・無理な動作」
上記を全て排除できれば、5~6割の災害を防止できます。
*記事2に記載したリスクの特定において、作業内容からリスクを抽出する際、1~3位に該当するリスクが漏れていないか、よくよく注意してください。
では、今日も一日、ご安全に。
記事4 安全衛生委員会の目的は何?
安全管理業務を担当の皆様、ご安全に。
OSH関連情報を展開します。
さて、第4回目は、「安全衛生委員会」についてです。
*教育資料も展開します。
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安全管理業務を担当すると、一番最初に資料作成や窓口を依頼されるであろう「安全衛生委員会」ですが、委員会設置の目的を以下に示します。
委員会設置の目的
労働災害防止の取り組みは労使が一体となって行う必要があります。そのためには、安全委員会や衛生委員会において、労働者の危険又は健康障害を防止するための基本となるべき対策(労働災害の原因及び再発防止対策等)などの重要事項について、労働者の意見を反映させるよう十分な調査審議を行う必要があります。
*労働安全衛生法第17~19条に詳細もあります。参考にご覧ください。
要するに、労働者の危険・健康障害防止のための対策に関して論議する場ということです。
*このサイトを開設した理由の一つに、本委員会での資料作成における負担軽減があります。PowerPointも展開するのは、負担軽減のためです。
尚、必要事項として、以下も必要です。
・毎月一回以上の開催 ・議事概要の周知 ・議事録の3年保管
まとめ
- 安全衛生委員会は労働者の危険・健康障害防止のための対策に関して論議する場
- 毎月一回以上の開催、議事概要の周知、議事録の3年保管 が必要。
既に実施中の事業所が殆どかと思いますが、事業所の人数増加、または事業区分の変更に伴い、開催が必要となるケースもあります。参加必須者や開催が必要な事業所の定義等もこちらに掲載されております。参考にどうぞ。
では、今日も一日、ご安全に。
記事3 不安全状態、不安全行動とは?
安全管理業務を担当の皆様、ご安全に。
OSH関連情報を展開します。
さて、第3回目は、「不安全状態」「不安全行動」についてです。
*教育資料も展開します。
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まずは、辞書的な意味ですが、今回は読んだ字のごとく、
「不安全」=「許容不可能なリスクがある」 状態や行動になります。
*本サイトの記事1参照
例
「不安全状態」・・・歩道に穴が空いている。。
「不安全行動」・・・スマホを操作しながら歩行している。
まずはこちらをご覧下さい。
*参考サイト
意外ですが、事故は「or」では殆ど起こらず、「and」の場合に発生し易いという結果が得られています。
歩道に穴があり、更に、スマホを操作しながら歩いている
⇒「不安全状態」と「不安全行動」が同時に存在すると、事故発生率が格段に上がります。
まとめ
- 「不安全状態」,「不安全行動」=「許容不可能なリスクがある」状態、行動
- 上記2つが同時に存在すると、事故発生率が上がる。
どちらか一方でも良いので、取り除けば事故は格段に減ります。
教育でも、周知でも良いので、少しづつ取り組んでいきましょう。
では、今日も一日、ご安全に。
記事2 リスクって何?
記事改定日:2022/9/25
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第2回目は「リスク」について紹介します。
*教育資料も展開します。
まずは、辞書的な意味で「リスク」以下となります。
リスク【risk】
の解説
要するに「災害や事故が発生する可能性や度合い」を指します。
次に具体的な運用方法ですが、3ステップにて運用します。リスク‐アセスメント【risk assessment】
の解説危機が発生した場合、発生源、伝播の経路、被害者の反応、発生頻度などのデータに基づき、どれだけの影響があるかを事前に評価すること。危機評価。
*goo辞書参照
*参考サイト
作業例
住宅用建材の柱を作成するメーカーにおいて、Aさんは角材をノコギリで10等分する定常作業(日常的に反復・継続して行われる作業)を行っている。
①リスクの特定
作業内容から危険性のある作業を抽出。
A:のこぎりで角材を切り出す際に手を切創する。
B:運搬時、切り出した角材のバリやささくれで手を切創する。
C:切り出す前の角材が重く、腰を痛める。
等々、なるべく細かく、詳細に、沢山書き出しましょう。
②リスクの分析
上記、A~Cにおいて、リスクの度合いを分析しましょう。
分析方法は各社、業界によって微妙に異なりますが、ここでは以下のように「影響度」と「発生可能性」の二軸から分析しました。
【図2: リスク分析結果(例)】
リスク管理Naviリスクマネジメントの情報サイト
要するに
「影響度」 発生した場合の事故の規模
「発生可能性」 事故発生の可能性
と考え、点数付けをします。
③リスクの評価
②の結果から、対策を行う優先順位を決めます。
まとめ
- リスクとは、災害や事故が発生する可能性や度合い
- リスクアセスメントとは、 事故発生の可能性や度合いを調査・評価すること
-
リスクアセスメントは、以下①~③工程を行う。①リスクの特定 ⇒ ②リスクの分析 ⇒ ③リスクの評価
では、今日も一日、ご安全に。