記事9 もう見慣れた三角形?ハインリッヒの法則 誤解し易いポイントとは?
安全衛生管理業務を担当の皆様、ご安全に。
さて、第9回目は「ハインリッヒの法則」についてです。
★本日の要点
- ヒヤリハットとは、その名の通り、実際には災害に繋がらなかった、突発的な事象やミスに「ヒヤリ」としたり「ハッとしたりするもの」を指す。
- 「ハインリッヒの法則」は「1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景には、29件の軽傷事故、さらに300件のヒヤリハットがある」ことを示す法則。
- しかし、裏付けデータが残っておらず、事故の種類によっても数値に偏りがあることから、あくまで傾向しか分からない。
- 更には、同一の人に類似した事故が330回起こった場合に適応可能な法則であり、330種類の事故を示す訳ではない。勘違いし易い要素を含む。
*以下の教育資料ppを展開します。自由に編集下さい。
★お願い事項
本サイトは広告収入を得るアフィリエイトを利用しており、下記をクリック頂けますと、管理人に数円の広告収入が入るシステムです。ご協力頂ける方はバナーをクリック下さい。お願い致します。
今後も、良質な情報展開、及び、教育資料作成に注力致します。何卒、宜しくお願い致します。
★詳細(~以降は興味のある方のみご覧下さい~)
〇「ヒヤリ・ハット」について
この単語、その名の通り、「突発的な事象やミスにヒヤリ」としたり、「ハッとしたりするもの」を指します。結果的にその災害は起こる直前で収まったが、重大な災害や事故も発生する可能性も十分あったものとなります。
以下に例を示します。ポイントは、実際には災害は起こらなかった、です。
*以下に事例集も展開します。
〇ハインリッヒの法則について
メーカー、医療現場等々、様々な業界で必ずと言って良いほど目にする以下の三角形、「ハインリッヒの法則」ですが、これは、「1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景には、29件の軽傷事故、さらに300件のヒヤリハットがある」を指します。
傷害を伴った災害を調べると,傷害は伴わないが類似した災害が多数発見されることがよくある。潜在的有傷災害の頻度に関するデータから,同じ人間の起こした同じ種類の330件の災害のうち,300件は無傷で,29件は軽い傷害を伴い,1件は報告を要する重い傷害を伴っていることが判明した。このことは5000件以上について調べた研究により追認されている。
- 重い傷害とは保険業者や(米国の)州の補償委員に報告されたものをいい,
- 軽い傷害とは応急手当だけですむ擦り傷や打撲等をいう。
- 傷害を伴わない災害とは,人間や物資,光線などの移動(スリップ,転倒,飛来,吸入等)を伴う計画外の事象で,傷害や物の損害の可能性があるものをいう。
- 報告のある傷害(重い傷害)のうちの大多数は死亡事故や手足を切断したような大事故ではない。全部が休業を伴うものでもなく,補償金の支払いを必要とするものでもない。
- 傷害を伴うにせよ伴わないにせよ,すべての災害の下には,おそらく数千に達すると思われるだけの不安全行動と不安全状態が存在する。
--H. W. ハインリッヒ、D. ピーターセン、N. ルース(著)井上威恭(監修)、(財)総合安全工学研究所(訳) 『ハインリッヒ産業災害防止論 海文堂出版(株) 1987年(昭和62年)9月 2版 ISBN 430358052X p59-60』
非常に有名な法則ですが、クレーム処理にも応用されているようです。参考に掲載します。
〇ハインリッヒの法則 注意すべき点
さて、そんな有名な法則ですが、実はいくつか注意点があります。
*参考動画
*安全衛生アカデミー「再考! ハインリッヒの法則」
①裏付けデータが残っていない
ハインリッヒに代表する1:29:300はあくまで全種類の災害平均で、更にはデータが残っていないことから、あくまで傾向としての推測しかできません。よって、以下の通り、災害種類によっても発生する比率は変わります。
尚、データ裏付けが取れたものとして、「バードの法則」があります。こちらも参考に掲載しますが、以下の通り、重症災害/軽傷災害/物損災害/ヒヤリハット=1:10:30:600となります。
②同一の人に類似した事故が330回起こった場合に適応可能
勘違いし易い点ですが、330種類の事故ではありません。
例
仮にパラレルワールドが330個あり、同じ人が並行して存在したと仮定します。
類似した事故に1回づつその人が被災したとすると、以下の通りになります。
・300人はヒヤリハットを体験。
・29人は軽傷事故を体験。
・1人は重大災害(死亡・重傷)を体験。
★管理者からのコメント
有名なハインリッヒの法則ですが、意外にも裏付けデータが無かったり、間違い易いポイントもあり、取り扱いに注意して下さい。尚、今回の伝えたいことを以下、例で挙げます。
転倒ヒヤリハットを体験したため、段差への対策を実施すると、軽傷事故・重大災害を防止できる可能性が高まるも、電気事故等の種類が異なるものの対策にはならず、また、その比率は災害の種類によっても異なるため、均等に対策の効果が発揮されるとは限らない。
となります。こう聞くと、とりあえず自身が体験したヒヤリハットを抽出して対策するよりも、危険性の高い危険源を早く特定し、対策を進める方が安全性は高まるのかなと感じました。
では、今日も一日、ご安全に。